菅首相が日本学術会議の6人を任命しなかった問題がクローズアップされています。日本学術会議にとって、これまでスムーズに任命されていた人数が任命されなくなったことは大きな問題であることは確かで、任命のあり方だけでなく、学問の自由のあり方や税金の使われ方、大学のあり方まで議論が広がり、これまで通りにはいかなくなっています。まさに、組織にとって危機的状況であることは確かでしょう。
このように、ある日突然危機の渦中に入ってしまった場合、広報の観点から考えると、一体どうしたらよいのでしょうか。私は、公式見解書を発表することをお勧めしたいと思います。
危機時に活用したい公式見解書
本コラムで最初に解説した初動3原則を思い出してください。何か起きたときには「ステークホルダーを把握すること」「方針を策定すること」「ポジションペーパーを作成すること」と解説しました。ポジションペーパーが、この公式見解書に当たります。起きた危機を客観的に整理し、この問題にどう向き合っていくのか、その姿勢を示す文章がポジションペーパー(公式見解書)になります。
組織の存在を危うくする危機が発生した際には、常にこの初動3原則に立ち返ることが重要です。日本学術会議の場合、主要ステークホルダーは内閣府、会員、学者、学会、一般国民になるでしょう。
その上で何を危機とするかですが、今回は推薦した6名が任命されたなったことになります。これに対し、何をどこに主張する方針とするのか。今回、その方針はあまりよく見えません。
これまでのところ、10月3日にホームページに掲載されている「要望書」が唯一の公式見解書になりますので、ここから察するに、総理大臣に対して要望する、という方針しかないように見えます。また、重要な要望書の内容は次の2項目だけです。
1.2020年9月30日付で山極壽一前会長がお願いしたとおり、 推薦した会員候補者が任命されない理由を説明いただきたい。
2.2020年8月31日付で推薦した会員候補者のうち、任命されていない方について、速やかに任命していただきたい
正直、拍子抜けする内容となっています。
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