2020/08/03
気象予報の観点から見た防災のポイント
猛烈な雨
この豪雨で1時間降水量の最大値を観測した郡上郡美並村(現在の岐阜県郡上市)における降水の経過を図5(左)に示す。8月17日の朝に降水の第1群、夕方に第2群が見られたが、17日夜の第3群が何と言っても顕著で、21時40分までの1時間降水量は114ミリメートルに達した。これは、当時、国内第2位の記録であった。
この豪雨による総降水量の分布を図5(右)に示す。事故現場に近い加茂郡富加村(現在の岐阜県富加町)では、8月18日9時までの24時間降水量が320ミリメートルに達した。
豪雨の雲パターン
ここで、視野を極東域に広げてみる。1968年当時、気象衛星「ひまわり」はまだなく、日本の気象庁はこの年の8月から、米国の気象衛星ESSA(エッサ)から送られてくる雲画像の受信を開始したばかりであった。8月17日の雲画像を図6に示す。
現在の高品質の気象衛星画像とは異なり、図6の画質は決して良くないが、飛騨川豪雨の際の雲のパターンがこの画像に現れている。注目されるのは、沿海州の近くまで進んだ台風の東側に当たる北海道付近から、南南西の方向に延々と伸びる細長い雲の帯である。その帯は、本州、四国、九州、南西諸島を経て、なんとフィリピンの東にある熱低低気圧にまでつながっている。その長さは3000キロメートル近くもあるのに、幅は100キロメートル程度で、部分的には紐のように細く見えるところもある。
図6の雲パターンは、気象関係者たちを驚かせた。飛騨川流域という狭い範囲に限られるかのように見える集中豪雨が、3000キロメートル近い長さを持つ雲バンドの中で生じたという事実に驚いたのである。
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