自社のリスク対策をメッセージとして発信
第16回目 復活に向けたリカバリーコミュニケーション
日本リスクマネジャ-&コンサルタント協会副理事長/社会構想大学院大学コミュニケーションデザイン研究科教授/
広報コンサルタント
石川 慶子
石川 慶子
東京都生まれ。東京女子大学卒。参議院事務局勤務後、1987年より映像制作プロダクションにて、劇場映画やテレビ番組の制作に携わる。1995年から広報PR会社。2003年有限会社シンを設立。危機管理に強い広報プロフェッショナルとして活動開始。企業・官公庁・非営利団体に対し、平時・緊急時の戦略的広報の立案やメディアトレーニング、危機管理マニュアル作成、広報人材育成、外見リスクマネジメント等のコンサルティングを提供。講演活動やマスメディアでのコメント多数。国交省整備局幹部研修、警察監察官研修10年以上実施。広報リスクマネジメント研究会主宰。2024年より社会構想大学院大学コミュニケーションデザイン研究科教授。
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5月14日、東京、千葉、神奈川、埼玉、大阪、兵庫、京都、北海道以外の39県における緊急事態宣言の解除が発表されました。今後必要になるのはどのようなコミュニケーションになのでしょうか。これまでを振り返りつつ、考えてみたいと思います。
危機前後における3つのコミュニケーション
危機管理におけるコミュニケーションのあり方を、私は3つの種類でとらえています。カタカナばかりで恐縮ですが「リスクコミュニケーション」「クライシスコミュニケーション」「リカバリーコミュニケーション」です。
(1)リスクコミュニケーション
リスクコミュニケーションとは、平時においてネガティブな情報を共有することです。たとえば原発誘致では、安全性のみの情報発信ではなく、原発のリスクも共有する必要がありました。
ただ、ここが日本においては大きなハードルで、ネガティブなことを言葉にすると、それが本当に起こるという「言霊(ことだま)」信仰が少なからずあります。そのため、なかなかリスクを話しにくい。そんな雰囲気が社会全体にあるように思います。
リスクは回避することも大事ですが、時には立ち向かっていかなければなりません。リスクをとって前に進む自己責任意識を持つこと、立ち向かう姿勢を合意形成することが、リスクコミュニケーションの肝といえるでしょう。
今回のコロナに関しては、未知の感染症ですから、いきなりクライシスに突入してしまいました。しかし、この経験を平時に戻った後のリスクコミュニケーション体制に生かしていく必要があります。
(2)クライシスコミュニケーション
クライシスコミュニケーションは、危機発生時のコミュニケーションです。そのため目的は、ダメージを最小限にすることにあります。
本連載で何度も記載していますが、危機発生時には何が起こっているのかわからないまま対応を迫られることもよくあります。ポイントは、よくわからなくても「大変な事態である」と認識すること、最悪を想定した行動計画を立てることです。
今回、厚生労働省のクラスター対策班が、このままでは大変なことになるという危機感から「対策ゼロなら40万人死亡」と記者会見の場で発表したのが4月15日です。勇気ある決断、行動ではありますが、すでに緊急事態宣言が出た後である点からすると、遅いと感じてしまいます。
国民への警鐘、自粛行動の促進という意味であれば、3月中に出した方がよかったといえます。ドイツのメルケル首相が3月12日に「国民の70%が感染する可能性もある」と述べていることからすると、3月半ばでも可能であったと感じます。
その一方で、文部科学省傘下の学校は4月上旬から学校を始める計画で準備をしていたこと、企業も3月下旬ギリギリまで新人研修を予定していたケースも数多くあることから、全国民で危機感を共有するのに時間がかかってしまったのは明らかです。その意味で、残念ながらクライシスコミュニケーションは成功したとは言い難いのです。
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