ブレーキばかりの脱炭素政策(イメージ/Adobe Stock)

産業革命前に比べて平均気温が1.5℃を超える2030年の予測をもとに、企業社会への多種多様な影響を見てきたこの連載は今回で最後となる。気候変動対策の現実はどうか。第二次トランプ政権が誕生して以降、気候変動を巡る空気は国内も一変しつつある。

最悪を上回る「未来」

この連載、「気候とビジネスのリスク・シナリオ-第二部:最悪のシナリオ」を書き始めた頃は、米バイデン政権が気候変動対策(インフラ抑制法)に力を入れている時期だったため、世界は徐々に良い方向に進むのではという多少の期待があった。

しかし今はどうか。結論から先に言えば、現実はこのシナリオよりもさらに悪い方向に進み始めたように思われる。もっとも分かりやすい例はメディアだ。テレビ報道からは「気候変動」や「カーボンニュートラル」といった言葉がほとんど消えてしまい、気候危機に警鐘を鳴らす番組は一つも見当たらない。出版メディアでは「気候危機はウソである」といった類の本が、YouTubeでは気候懐疑論が、再び息を吹き返しつつある。

ビジネスの世界はどうか。SDGsや環境をテーマにした企業広告は大幅に減少している。米国で米大手銀行がNZB(国際的な脱炭素金融の枠組み)から離脱したのを受け、日本の大手金融グループも相次いで離脱を表明した。脱炭素への取り組み自体を後退させるわけではないとしているが、自ら脱炭素にブレーキをかけたことに変わりはない。