キートレンド(1) インフラの早期復旧を支える

日工は建設資材プラントの設計・製造・販売からメンテナンスまで一貫して手 がけるトップメーカー。災害後は需要増に応えるため地域の取引先プラントを支援する(写真提供:日工)

能登半島地震では、災害時の初動や支援における道路の重要性が再認識された。真っ先に寸断箇所の啓開にあたる地元建設業者の尽力はいうまでもないが、その後の応急復旧には補修資材が欠かせない。特に「地域材料」の生コンクリートやアスファルトは、地元プラントの稼働継続、あるいは早期復旧が不可欠だ。大手プラントメーカーの日工(兵庫県明石市、中山知巳社長)は2025年度、取引先の工場が供給を継続するための支援強化に乗り出す。

日工
兵庫県明石市

建設資材プラントメーカーの日工は2025年度から、災害時に地域のアスファルト工場や生コンクリート工場が供給を継続するための支援体制づくりを強化する。

21年から取り組んできた「日工防災プロジェクト」の一環。工場機械の迅速な復旧にとどまらず、エリア内の稼働状況の把握・共有や代替設備の提供、甚大な被害の予防など、多面的な取り組みで取引先のプラントを支える方針だ。

同社が手がける国内プラントのシェアは、生コンが33.3パーセント、アスファルト合材が実に78パーセント。機械設備の設計・製造・販売からメンテナンスまで一貫して携わるトップメーカーとして、災害発生時は被災地の工場に稼働状況を確認、被害があれば駆け付けて修理にあたる。

福島県内のアスファルト合材工場(写真提供:日工)

「人命救助にも物資輸送にも道路の復旧が第一。地元建設業者が真っ先に動いてがれきや土砂をどけてくれても、舗装に亀裂や段差があれば十分に使えません。次の段階では、必ず補修用の生コンやアスファルト合材が要る。プラントの稼働継続は我々の使命」。経営企画部広報担当の岡橋早苗氏はそう話す。

取引先プラントの早期復旧に奔走

この使命を最初に痛感したのが阪神・淡路大震災だ。明石市の本社が被害を受け、社員も被災するなか、取引先のプラント修理を最優先に取り組んだ。都市構造物の倒壊と無数の道路寸断が復旧を大きく阻害し、補修のための合材や生コンを供給するプラントの早期再稼働が強く求められたからだ。

出社可能なスタッフが本社に集まると、即座に取引先の調査を開始。電話が通じない場所は自転車とバイクで直接現地へ赴き、発災10日後には兵庫県内約100工場の状況を把握。神戸市を中心にアスファルト合材13工場、生コン13工場の被害を確認し、メンテナンスのために在庫していた部品を使ってすぐに修理を開始した。

 
阪神・淡路大震災による資材プラントの被害。自転車やバイクで被災地をまわり、取引先の被害状況を確認した(写真・図提供:日工)

東日本大震災においては、津波によって広範囲の取引先が被災。岩手から福島の沿岸でアスファルト合材27 工場、生コン十数工場が長時間の稼働停止を強いられた。同社は仙台にある東北支店の人員を増強するかたちで明石の本社と関東の拠点から急きょ技術者を派遣、発災3日~4日後から24 時間体制で修理受付を開始した。

「それこそ福島第一原発の避難区域内にも生コン工場があった。最初は立ち入りできなかったが、原発および周囲の復旧には生コンが不可欠。最終的に放射線量管理のもとで修理と建替工事を行った」と岡橋氏は話す。

東北沿岸で見込まれる復興需要に対し、圧倒的に供給が足りなくなることは当初から明らかだったという。大手道路会社の投資判断は早く、既存プラントを修理・再稼働しながら隣に新規プラントを増設するなど、供給能力の増強と安定化を下支えした。

 
東日本大震災では津波や原発事故などにより、広域でプラントに被害が発生。東北支店に対策本部を設置し、24時間体制で修理受付を行った(写真・図提供:日工)

また、昨年の能登半島地震では七尾市より北にある取引先のプラントがすべて稼働停止。現地の混乱から確認が難航したが、最終的に合材3工場、生コン3工場の被害をホームページで公表しながら復旧にあたり、建て替えた輪島市内の生コン1工場を除いて、すべて2月までに稼働を再開した。