バランスのあるケアと法的必要条件

全ての公共または民間の救急医療システムは、救急隊員が遭遇する可能性のある補助犬とされる犬や他の情緒障害サポートアニマルを迅速に見極めるために役立つガイドラインや、状況に応じた選択肢を作っておく必要があります。

ADAは、補助犬として受け入れるべきものを定義し、その決定を行う際の許容の限度、またどういった場合に飼い主と一緒に補助犬を搬送することを拒否できるのかを明確にしています。

これらのADA要件は、従うか否かを選べる提案ではなく、法的拘束力があり、治療プランの全体に含まれていなければなりません。

救急隊員が患者と共に補助犬を搬送しないと決めた場合、二つの顕著な問題が生じる可能性があります。

1)患者が心の安定を保つことができなくなり、さらなる不安を招くことになります
2)適法な障害者への便宜を拒否すると、法的影響を受ける可能性があります

確かに患者の搬送中の情緒障害サポートアニマル(つまり、ADAの補助犬の定義に合わない動物)の役割を考えると、単に「ダメです」と言うことは合法ですが、総合的に見てそれが患者にとって最良の選択肢である場合はどうでしょう。

●次のように考えてみてください
もし、それがあなたの母親や父親、兄弟姉妹だとしたら、患者がさらなる情緒的なサポートを得るために必要な便宜を図ろうとはしませんか? また、ニュースメディアがあなたのやり取りを撮影していた場合、あなたの決定が一般の人にどのように受け止められるか気になりませんか? 過ぎたことをとやかく言う世論が、あなたのとった行為が妥当だったというでしょうか?

全ての患者をあなたの家族の一員であると思って対応するなら、動物を一緒に搬送できるようにする打開策を考えてみてはどうでしょうか。もちろん、安全に搬送できると思われる場合においてではありますが。

ただもし動物を同伴させるために欺かれだまされていると感じたり、患者の情緒障害や情緒の安定に効果が認められないと思ったりしたときには、「同伴はできません」と伝えてよいと思います。

何かを決定する際は、それが事業所の方針に沿っていることを確認しましょう。指揮系統だけでなく受け入れ病院にも注意を払い、指示に従いましょう。そして、動物の存在、患者と一緒に搬送することを許可したかどうか、その決断に至った根拠を必ず記録に残しておいてください。将来、問い正されたり、告発されたりした際に、これが大いに役立ちます。

結論

救急隊員がナンシーさんを病院に運ぶ準備をしているときに、彼らは彼女の犬をどうするか決断を迫られたこと。

犬がADAの特定のサービスアニマルの基準を満たしていないことは明らかなので、救急隊員は犬を救急車に乗せナンシーさんに同行することを法的に拒否することもできます。しかし、ナンシーさんとの短いやり取りの中で、ナンシーさんと犬との間に特別な絆があることが分かり、ナンシーさんと犬を一緒に運ぶことが最善であると判断しました。

救急隊本部の方針では、安全に遂行できる限り、患者のケアにとってサービスアニマルを一緒に運ぶことが最善であるかどうかの判断を救急隊員に委ねています。

救急隊員は自らの決定を記録し、犬がナンシーさんに情緒の安定をもたらしていることを書き留めています。彼らはまた、彼女のペットが明らかにナンシーさんの指示に従うよく訓練された従順な犬であることを記録しています。

搬送中、犬はナンシーさんの横に座っており、ナンシーさんは犬を見たり、触れたりすることができます。ナンシーさんと彼女の犬との心の絆は、ストレスのない搬送を可能にし、救急隊員が経過観察を行う際にも犬が邪魔になることはありません。救急隊は情緒障害補助犬がケアプランの一部であったことを伝え、また病院に着いてからもサポートしてもらえるよう受け入れ病院に連絡を入れます。

なお、大手航空会社や公共交通機関によっては、情緒障害者補助犬がさまざまな公的な移動手段を利用できるように、下記のようなフォームを作って、他の利用者への理解と社会的なバランスを取っています。

このような取り組みは、さまざまな情緒障害のある方々、発達障害者の方々が情緒障害者補助犬と共に社会的に平等なスタンスで、生活と健康を守りながら、日常生活を送ることや、災害時には一緒に公共の避難所等に避難することを可能にします。災害弱者を減らすためにも日本でも取り入れられるべきだと思いますが、いかがでしょうか?

感情支援動物/精神的補助動物リクエスト(PDF)
https://petsaver.jp/PDF/ELSA.pdf

下記のワードファイルは、施設事情などに応じて、自由に編集してお使いいただけます。

感情支援動物/精神的補助動物リクエスト(Word)
https://petsaver.jp/docx/ELSA.docx

謝辞
この記事の写真に表示されている犬は、「Arizona Power Paws」によって提供された糖尿病警報犬モリーといいます。Arizona Power Pawsは障害のある子どもや大人に高度に熟練した援助犬を提供する非営利団体で、教育および援助犬チームの働きに対して継続的な支援を提供しています。オンラインでhttps://azpowerpaws.org/を検索してみてください。

参照
注1)Seizure dogs. (n.d.) Epilepsy Foundation.[発作性疾患の人々に警告するか、または助けることができる犬、てんかん団体]https://www.epilepsy.com/learn/seizure-first-aid-and-safety/seizure-dogs(2017年5月19日閲覧)

注2)Krause-Parello CA, Sarni S, Padden E. Military veterans and canine assistance for post-traumatic stress disorder: A narrative review of the literature. Nurse Educ Today. 2016;47:43-50.[Krause-Parello CA, Sarni S, Padden E.共著「退役軍人と心的外傷後ストレス障害(PTSD)の人のための犬による補助:文献のナラティブレビュー」『今日の看護師教育』2016版47:43-50.]

注3)ADA requirements: Service animals. (July 12, 2011.) U.S. Department of Justice Civil Rights Division: Information and Technical Assistance on the Americans with Disabilities Act. [ADAの要件:サービスアニマル(2011年7月12日)米国司法省公民権課:障害を持つアメリカ人法に関する情報と技術支援]https://www.ada.gov/service_animals_2010.htm(2017年5月19日閲覧)

注4)Frequently asked questions about service animals and the ADA. (July 20, 2015.) U.S.  
Department of Justice Civil Rights Division: Information and Technical Assistance on the Americans with Disabilities Act.[サービスアニマルとADAに関してよく寄せられる質問(2015年7月20日)米国司法省公民権課:障害を持つアメリカ人法に関する情報と技術支援]https://www.ada.gov/regs2010/service_animal_qa.html(2017年5月19日閲覧)
 

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