行動制限に伴う痛み「自覚的」に

――流行のスピードを遅らせる点で、現在とられている対策は有効ですか。
外出や移動の自粛、店舗の休業などで人と人の接触機会を減らすことは、流行のスピードを遅らせる面ではプラスに働きます。その意味では、必要な対策だと思います。

ただし考えないといけないのは、弱い立場にある人を守ること。感染した人はもとより、高齢者や基礎疾患のある人、あるいは休廃業や失業を余儀なくされ経済的困難に直面している人もそうかもしれません。そうした人たちへの目配りを怠らずに対策を進めていくことが重要です。

――政府や自治体の対策に、内外から「遅い」「甘い」といった批判の声も出ています。海外のように強制力を持った行動制限が必要でしょうか。

地方都市の繁華街からも人が消えた(長野市・権堂)

個人の外出や移動、また企業の活動をどこまで制限するかは、立場の違いで判断が分かれるところだと思います。おそらく唯一無二の答えはない。正解・不正解ではなく、何を選ぶかの問題でしょう。

ただ、強制力を持った行動の制限は非常に強い影響を社会に及ぼし、痛みを伴います。少なくとも、そのことに「自覚的」でなければならない。個人の思考や判断を「無自覚」に手放してしまうことで失敗してきた例が、過去には数多くあります。