2020/05/14
2020年5月号 パンデミックBCP

新型コロナウイルス感染拡大への対応で困難な状況にある日本社会において、医療と経済の双方を守る危機管理のあり方が求められている。政府による緊急事態宣言が発出される中、6 人の危機管理分野のエキスパートがそれぞれの課題や提案を持ち寄り、日本の危機管理への提言をまとめるべく座談会に臨んだ。参加者は、日本大学危機管理学部の河本志朗教授、名古屋工業大学の渡辺研司教授、防衛医科大学校の秋冨慎司准教授、日本政策投資銀行の蛭間芳樹氏、日本防災デザインの熊丸由布治氏、重松製作所の濱田昌彦氏。司会はリスク対策.com 編集長の中澤幸介。
https://bcp.official.ec/items/28726465
想定すべき「最悪のシナリオ」
中澤 まず、現実になりつつある最悪のシナリオについて、秋冨先生の考えを。
秋冨 簡単に言うと、イタリアやアメリカのような状況になること。今回の新型コロナウイルス感染拡大は、自然界からの生物テロという側面だけでなく、経済テロといった側面も非常に強い。危惧しているのは、医療だけの問題ではない。危機管理には、医療だけでなく、経済、金融、教育などを含めた総合的な対応が必要になってくる。

中澤 イタリアやアメリカのような状況以外で想定すべきことは。
熊丸 これから台風シーズンに入るが、台風や地震といった自然災害とのダブルパンチとなると、本当に最悪のシナリオに突入するという恐怖感がある。

秋冨 3つのリスクが考えられる。1つは、自然災害など他の災害が重なったときどうするか。2つ目は、現在の何らかの強制力のない環境で、日本人の良心だけに訴えてうまくいかなかった場合、他国に比べかなり日本の経済が遅れていく。中国や他の各国も経済復興に向かっていく中、日本だけ経済が遅れるのではないかということ。3つ目は、いま医療現場を支援する人材に対しての支援が乏しすぎて、健康を守る医療従事者という人材リソースが枯渇するのではないか。それに引きずられて医療だけでなく、警察、消防、行政職員という重要な社会的インフラという存在でもある人材リソースまでも一緒に失われていくのではないか。
2020年5月号 パンデミックBCPの他の記事
- コロナ危機への対応を通じて今、見直すべきことは何か(最終回)
- コロナ危機への対応を通じて今、見直すべきことは何か(その2)
- コロナ危機への対応を通じて今、見直すべきことは何か(その1)
- 人類が初めて経験する「現代的パンデミック」コロナ後の世界 どう生きるか
おすすめ記事
-
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
-
-
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
-
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
-
-
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
-
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
-
-
生コン・アスファルト工場の早期再稼働を支援
能登半島地震では、初動や支援における道路の重要性が再認識されました。寸断箇所の啓開にあたる建設業者の尽力はもちろんですが、その後の応急復旧には補修資材が欠かせません。大手プラントメーカーの日工は2025年度、取引先の生コン・アスファルト工場が資材供給を継続するための支援強化に乗り出します。
2025/04/14
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方