4月7日の緊急事態宣言に際して行われた首相の記者会見

4月7日に7都府県、4月16日には全国を対象に緊急事態宣言が発出されました。歴史に残るメッセージについて、危機管理広報の観点から分析します。

ターゲット日を決めてそこに向けて準備

危機管理広報(クライシスコミュニケーション)においては、初動3原則が重要だと本連載の1回目で解説しました。「ステークホルダーを見失わないこと」「方針を明確にすること」「ポジションペーパー(見解書)を用意すること」がその三つ。今回はそれらに加え、危機時のメッセージ発信で求められる三つの注意ポイントを解説します。

それは「タイミング」「表現」「手法」です。いつ、どのような言葉を、どのような形で発信すると一番伝わるか、戦略的に組み立てるということです。

4月7日の緊急事態宣言は遅すぎるという声が多くあります。なぜ遅いと感じたか、理由を挙げれば、2月25日に政府方針が発表されてから1カ月以上経っていたこと、北海道が先駆けて緊急事態宣言を出していたこと、諸外国で次々に緊急事態宣言やロックダウンをしていたこと、先に小池都知事が緊急記者会見を開いて危機感を表明していたことなどから、そう見えてしまったといえるでしょう。

また、2月はいきなりの全国一斉休校という強引な要請でした。このまま予防的観点で対策をするのかと思っていたら、3月中旬から「状況によって判断する」方針になったことで、迷走しているようにも見えてしまいました。

避難においては準備アナウンスが重要だと、福島原発事故の教訓としていわれています。いきなりではなく2週間程度の準備期間があれば、学校授業のオンライン化、企業のテレワーク化はよりスムーズに進んだのではないでしょうか。

広報戦略においては、必ずピークポイントを決めます。それまでに徐々にアナウンスして、最大の効果を狙うわけです。今回でいえば、ターゲットの日を例えば3月中旬、卒業式あたりとして、それまでに国民の心の準備、行政の体制準備を進めて、一気に緊急事態宣言を全国に発信していればまったく違った評価になったでしょう。