2017/04/25
災害から命を守れ ~市民・従業員のためのファーストレスポンダー教育~
■トリアージの手順
くどいようだが、トリアージする際もCFR、CERTメンバーは個人用保護具を装着していなければならない。また、救助者の安全第一の観点から危険物・テロ災害現場においてはCFR、CERTメンバーはトリアージは行わないことをルールとして明文化するべきである。
PPE(個人用保護具)もOK、現場の安全も確認できたなら次に示すステップに従いトリアージを行う。
Step2:ボイストリアージ
Step3:あなたの立っている場所から効率のいいルートで始める
Step4:要救助者の評価とタグ付け
Step5:“I”の要救助者から処置
Step6:トリアージの結果を記録に残す
まず、あなたの立場を考えよう。現場の状態は安全なのか?あなた自身とチームの能力や技術レベルで対応が可能なのか?限界点や引き際を理解しているか?などについて考えがまとまったら、決断し、即行動に移す。次に、大声で「救助隊です!もし歩けるのなら私の声のするところまで来てください!!」とボイストリアージを行う。
指示に従う事が出来て、誘導する場所まで自力で来た人はM(緑)タグとして分類し、指定の場所へ誘導する。ボイストリアージの指示に従えない残った要救助者に対しては、自分が立っている一番近くにいる要救助者からアセスメント(要救助者の評価)を開始する。
一番効率のよいルートを考え、無駄な動きが出ないよう素早く(一人の要救助者に対し15秒から30秒で)分類していく。そして前述の判定分類を実施していく。評価の手順は呼吸、出血、循環、クラッシュシンドロームの確認を行い(トリアージフローチャート参照)、一つでも評価基準を満たしていなければI(赤)タグを付け、必要な処置を行う。そして、トリアージ記録を書面に記入していく(右記簡易トリアージ記録表参照)。
元気な人ほど、騒いだり、大袈裟に助けを求める傾向にあるが、そういう要救助者は状況に応じて後回しにする選択肢もあるだろう。本当に重症な人は声すら出せないものである。救助者として、“声なき声”を探す配慮も必要だ。
さあ、それではトリアージの練習をしてみよう。
【まとめ】
今回は災害救護1の後半について解説した。その中でも市民レベルによる簡易トリアージの手法について触れたが、トリアージの盲点をいくつか追記して本章のまとめとしたい。
まず、災害救護の原則は最短の時間で最大数の要救助者の命を救うことだ。つまり短時間で多くの要救助者を正しく評価していかなければならない。文字通り時間との戦いである。それを確実に実践に移すためには繰り返し訓練を行う必要があることは言うまでもないだろう。是非、読者の皆様には1人の要救助者に対し15~30秒以内で正しいアセスメントが実行できるようになるまで練習を繰り返して欲しい。
また、とかくありがちなのがチームとして動くためのプランがしっかりとしていないことだ。この部分についても読者の皆様は第3章「チームの安全を守るICS」の章で学んでいるので、チームとしての機動力を意識した訓練を行っていただきたい。市民レベルといえども、当然現場では強いリーダーシップがなければチームの機動力を発揮することは難しいだろう。
次号は災害救護2として、トリアージエリアの設定方法や記録の方法など今回の続編的な内容と、生命危機状態以外の要救助者に対する処置方法など、よりファーストエイドに近い内容を紹介する。
参考文献:
•COMMUNITY EMERGENCY RESPONSE TEAM.Basic Training Instructor Guide.FEMA.DHS
•内閣府防災情報のページ(教訓情報資料集)
•災害とクラッシュ症候群、安田清 小林一郎著、発行:アサヒカコー株式会社
•市民救助隊養成講座テキストブック
(了)
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