2016年7年に起きたバグダード爆弾テロ事件 (画像出典:写真AC)

※前編はこちらから【第8章】 危険物/テロ災害対応(1)(前編)

■生物テロ(B災害) 

生物テロ(B災害)はウィルス、バクテリア、生物毒などの病原性微生物(バイオハザード)を意図的にばらまき、人を殺傷するものだ。生物兵器は炭ソ菌のように即効性があるものだけとは限らず、攻撃が仕掛けられてから数日あるいは数週間を経てからその症状が現れるケースのほうが多く、長期的または広範囲に影響を及ぼすものがあることから、高いリスクの兵器をして認識する必要がある。生物テロによる攻撃を受けると次のような徴候がある。

• 天然痘のような奇妙な病気にかかる。
• 同じような症状の患者が多数発生する。
• スプレー装置のようなもので拡散させる方法もある。
• 地域特有の風土病が違う地域に発生している。
• 風下に多数の犠牲者が出る。
• 病院や救急センターに多数の通報がある。
• 同じ食物、水、場所によって病気にかかる。
• 流行性感冒(インフルエンザ)が多発する時期以外に多くの人が感冒(かぜ)のような症状になる。

■核・放射性物質関連テロ(NR災害)

放射線とは、放射性物質(元素)の放射性壊変に伴い放出される粒子放射線(アルファ線ベータ線・電子線・陽子線・中性子線など)と高エネルギーの電磁放射線(ガンマ線・エックス線)の総称である。見ることも、嗅ぐことも、人間の五感では感知することができない。紫外線、宇宙線、ラドン、地表など自然界にも多く存在しているものから、X線など人間が物理的にコントロールできるものなどさまざまである。

テロリストが主に使用する武器の中にダーティーボム(汚い爆弾)と呼ばれているものがある。これは通常の爆薬(TNTやプラスチック爆弾等)と放射性物質(セシウム137、コバルト60、ストロンチウム90、イリジウム192など)で構成されている兵器だが、爆発物を使用せず拡散させるものも含んでおり、これらを総称してRDD:Radiological Dispersal Device(放射線拡散装置)と呼んでいる。これらの放射性物質は病院などの医療施設や大学の実験室、または放射性物質を取り扱っている各種プラントなどで日常的に使用されているので、テロリストにとっても入手ルートの選択肢が多い。

これらの兵器は(爆弾の量にもよるが)即時の死傷者はほとんど出ないが、発覚までにタイムラグがありパニックを引き起こしやすい。また長期間におよぶ経済的な損害・停滞を招き、除染活動や復旧に莫大な予算がかかるため非常に高いリスクとして認識しなければならない。 

一方原子爆弾、水素爆弾、中性子爆弾として知られる核兵器は、核分裂の連鎖反応または核融合反応で放出される膨大なエネルギーを利用して爆風、熱放射、放射線効果などの作用を破壊に用いる兵器だ。

唯一日本は広島・長崎で核兵器の被害を経験している国である。想像を絶する爆風で人や建物は壊滅的な被害を受け、きのこ雲により放射線による被害が広範囲に広がる。爆発による熱や炎で火傷を負い、閃光で視力を一時的、恒久的に失う。核兵器はミサイルに搭載する大型の核弾頭から個人で持ち運び可能な簡易核爆弾(Improvised Nuclear Device)などさまざまなものが開発されているが、テロリストが使用する可能性のリスクは低いと専門家は言及している。

核・放射性物質関連テロでは、その他にもSRD(Simple Radiation Device)と呼ばれる単純放射線装置や原子力発電所からの放射性物質漏洩を狙ったものも含まれる。テロリストが使用する可能性のリスクは低くとも、一旦これらで攻撃を受ければ、その被害は甚大で長期的に広範囲に広がり、人々に対する健康被害をコントロールするのが非常に困難になる恐ろしい兵器である。

■爆発物テロ(E災害)

テロリストが選択する武器の約8割を占めるのが爆発物だ。最も使用頻度の高い、手作りで簡単に製造可能なIED(Improvised Explosive Device:即製爆弾)から軍隊が使用する手榴弾、迫撃砲、地対空ミサイルまでさまざまである。IEDにはパイプ爆弾、自爆ベルト・ベスト、スーツケース爆弾、車輌爆弾などの種類がある。AOAV(Action On Armed Violence)の報告によると、2016年だけでも爆発物による人的被害は世界で45,624人にも上り、そのうちの70%が民間人であった。2011年と比較すると民間人の犠牲者数は、なんと92%の増加率である。