動物の恐怖への反応は人間とは異なる

動物が建物火災に閉じ込められた場合の反応は、人間の避難行動とは大いに異なります。確かに動物も怖がって、おそらくパニックになるでしょうが、ほとんどの場合、ペットは建物から脱出しようとしません。

元フィラデルフィアの消防士でレッドポー緊急救援チームの創設者であるジェン・リアリー(Jen Leary)さんによると、動物は、その場所が危険になった場合でも、常に彼らが最も安全だと感じる場所に引き寄せられます。ほとんど全ての家庭で飼われている動物にとって、 その安全な場所とは自分のケージやいつも過ごしている家のどこかなのです(注2)。

医療機器の補充として特別なサイズの動物用酸素マスクを追加することを検討すべき。ここに示されているのは、スミスメディカル社のサージベットペット酸素マスク(写真提供: G・クリストファー・グリーザー)

リアリーさんは、大規模な建物火災の後であっても、家の中でペットを発見したことがあるそうです。

犬はソファやベッドのような大きな物の下に隠れがちです。猫は同じようにこういった場所に逃げ込むだけでなく、クロゼットやパントリーの奥の隅に隠れることもあります。

猫は入り込める壁と壁の隙間に無理やり入り込んで隠れていることもあります(注2)。消防隊は全焼していない家でオーバーホールを行う際、このことを念頭に置いておいてください。

緊急時の基本はペットも人間も同じ

人間と動物は多くの点で異なりますが、特に解剖学と生理学の分野においては、顕著な類似点もあります。救急医療に携わる消防隊員は、逃げ遅れた者などを発見して火災建物内から救出した場合、気道確保、人工呼吸、心臓マッサージといった緊急時のABC(基本)を行います。同様に緊急時のペットへも、人間の患者と同じ優先順位でアプローチすることができます。

犬と猫は人間と同じ気道機能を持っていますが、これらの機能は大変異なる場所にあります。ほとんどの犬の鼻口部は前方にせり出していますが、犬によっては鼻口部のせり出し部分が短い場合もあります。人工呼吸を行う場合、犬の気道の解剖学的違いを考慮する必要があります。猫の気道は人間や犬の気道よりも狭く短く、コンパクトです。犬と比べると、猫の気管を見つけてアクセスすることはやや難しいといわれています。

犬と猫の呼吸数は人間とは若干異なります。子犬の通常の呼吸数は1分間に15〜40回、青年期の犬と成犬は1分間に18〜24回。猫の呼吸数は1分間に20〜30回です。犬は猫より息が荒く、一部の猫は怖がったり、ストレスを感じたり、熱くなったりすると息が荒くなります。

脈拍を測ることで、犬や猫の脈拍数が正常の範囲内であることを確認することができます。大腿動脈は、胴体とつながっている辺りの後足大腿部の内側にあり、そこで脈を測ることができます。難しいので、犬や猫の前足の同じような場所で脈拍を測ろうとしないでください。頸(けい)動脈で脈を測るのも難しいので、やめておきましょう。

子犬の通常の心拍数は毎分90〜120回で、普通の犬は毎分60〜110回。猫の通常の心拍数は毎分120〜140回です。猫の脈拍は犬よりも測ることが難しいことに注意してください。

犬や猫の灌流(かんりゅう、血液の循環)の測定は、人間のそれとは大きく異なっています。救急医療に携わる消防隊員は通常、人の場合、遠位毛細血管再充満をチェックして灌流を測定します。犬や猫は毛や毛皮があるので、毛細血管再充満(CRT/capillary refilling time)評価技術は役に立ちません。

従って、犬や猫の血液循環を知る上での主な指標は、歯茎の色です。普段、犬と猫の歯茎はピンク色をしています。青白い、灰色の、または白い歯茎は非常に貧弱な灌流を示しています。

犬や猫の歯茎の色が異常に変色している場合は、ショック状態に陥っている疑いがあります。こういった場合は、獣医への即時搬送が必要です。