2019/07/16
海外のレジリエンス調査研究ナナメ読み!
許容停止時間は短く
図1は「あなたの組織は重要なITシステムなしでどのくらいの時間耐えられますか? (すなわち、あなたの組織の最大許容停止時間はどのくらいですか?)」という質問に対する回答結果である(注3)。下側の色が濃い部分が2017年、上側の斜線部分が2019年の回答結果である(グラフの原点と縦軸の間隔が両者の間で異なるようなので比較の際は注意されたい)。
両者は同じような形になっているが、数値を細かく見ていくと、「12時間未満」より左側(より時間が短い側)の数値が若干増えていることが分かる。誤差の範囲という感じがしないでもないが、この点について本報告書では「これはおそらくビジネスにおいてダウンタイムがより許容されなくなってきているためであろう」と指摘されている。

また図2は、経営層は最大許容停止時間がどのくらいだと考えているかを尋ねた結果である。図の下側の色が濃い部分がIT部門の回答(つまり図1の上側と同じ)、上側の薄い部分が経営層の認識である(こちらも図1と同様、グラフの原点と縦軸の間隔が両者の間で異なる)。

この結果を見る限り、IT部門と経営層との間で認識のズレはあまり大きくないようであるが、本報告書においては「1時間未満」より短い部分の数字を見ると経営層の方が若干多いので、経営層のほうが若干シビアに考えているようだと指摘されている。
本稿では筆者の興味ある部分をピックアップして紹介させていただいたが、本報告書では他にもサイバーセキュリティやデータ保護・バックアップなどに関する調査結果が掲載されており、図が中心でページ数の割には平易に読める報告書なので、このような分野にご興味のある方々にはご一読をお勧めしたい。
■ 報告書本文の入手先(PDF34ページ/約8.1MB)
https://www.databarracks.com/resources/data-health-check-2019
注1) 例えば直近では以下の各回でサイバーセキュリティに注目されている調査報告書を紹介させていただいた。
第73回:GDPR導入後の英国におけるサイバーセキュリティの実態(英国デジタル・文化・メディア・スポーツ省 / Cyber Security Breaches Survey 2019) https://www.risktaisaku.com/articles/-/18239
第72回:DDoS攻撃の発生状況とその実態(Link11 / Distributed Denial of Service Report for the year 2018) https://www.risktaisaku.com/articles/-/18104
第67回:世界のBCM関係者の懸念は今年もまたサイバー攻撃(BCI / Horizon Scan Report 2019) https://www.risktaisaku.com/articles/-/15890
注2) 2018年12月に紹介させていただいた下記の調査報告書で、インシデントの根本原因として最も多かったのは「Change management」(変更管理)であったこととも整合する。
第61回:英国の金融業界におけるITトラブルに関する実態調査(FCA / Cyber and Technology Resilience: Themes from cross-sector survey 2017-2018) https://www.risktaisaku.com/articles/-/13573
注3)「最大許容停止時間」(maximum tolerable period of disruption)は国際規格ISO22301:2012(および日本産業規格JIS Q 22301:2013)で次のように定義されている。
「製品・サービスを提供しない、又は事業活動を行わない結果として生じる可能性のある悪影響が、許容不能な状態になるまでの時間」。
(了)
- keyword
- 世界のレジリエンス調査研究ナナメ読み
- サイバーセキュリティ
- レジリエンス
海外のレジリエンス調査研究ナナメ読み!の他の記事
おすすめ記事
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/01
-
-
-
-
-
全社員が「リスクオーナー」リーダーに実践教育
エイブルホールディングス(東京都港区、平田竜史代表取締役社長)は、組織的なリスクマネジメント文化を育むために、土台となる組織風土の構築を進める。全役職員をリスクオーナーに位置づけてリスクマネジメントの自覚を高め、多彩な研修で役職に合致したレベルアップを目指す。
2025/03/18
-
ソリューションを提示しても経営には響かない
企業を取り巻くデジタルリスクはますます多様化。サイバー攻撃や内部からの情報漏えいのような従来型リスクが進展の様相を見せる一方で、生成 AI のような最新テクノロジーの登場や、国際政治の再編による世界的なパワーバランスの変動への対応が求められている。2025 年のデジタルリスク管理における重要ポイントはどこか。ガートナージャパンでセキュリティーとプライバシー領域の調査、分析を担当する礒田優一氏に聞いた。
2025/03/17
-
-
-
なぜ下請法の勧告が急増しているのか?公取委が注視する金型の無料保管と下請代金の減額
2024年度は下請法の勧告件数が17件と、直近10年で最多を昨年に続き更新している。急増しているのが金型の保管に関する勧告だ。大手ポンプメーカーの荏原製作所、自動車メーカーのトヨタや日産の子会社などへの勧告が相次いだ。また、家電量販店のビックカメラは支払代金の不当な減額で、出版ではKADOKAWAが買いたたきで勧告を受けた。なぜ、下請法による勧告が増えているのか。独占禁止法と下請法に詳しい日比谷総合法律事務所の多田敏明弁護士に聞いた。
2025/03/14
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方