□解説:2008年度倒産企業の6割が黒字

企業会計において、損益は必ずしもキャッシュベースの収支と一致しません。企業の取引は現金だけでなく、信用による掛け取引があるからです。P/L上に利益が計上されていても現金が不足すれば、企業は簡単に倒産に追い込まれてしまいます。これが「勘定あって銭足らず」といわれる黒字倒産です。

昨年度(2018年度)の上場企業の倒産件数は1件(東京商工リサーチ調べ)でしたが、上場企業の倒産件数が33件と過去最高を記録した2008年度において、およそ6割(19社)が直前の決算で利益を計上していた「黒字倒産」でした。

その防止策として、多くの企業では資金繰り表・資金計画表を作成し、万一の場合に備えて自己資金を保有しています。それにより、この先半年から1年分の現金の出入を予想し、賞与や納税、設備投資など大口の支出に備えると同時に、必要であれば借入計画を立てたりします。時には、余剰資金を明らかにし、借入金の早期返済の可能性を模索したりします。

もし資金繰り表で資金不足の兆候が見られる場合には、
① 事業の収益の改善を実施する
② 売掛金や手形の回収を実施する
③ 銀行などからの「つなぎ資金」を調達する

などの対策が考えられますが、特に②において「売掛金や手形の回収が長期化している場合」は要注意です。最悪の場合、金額の大きな取引先が倒産すると、連鎖倒産に巻き込まれる可能性もあります。