勘定あって銭足らず! これが黒字倒産
第4回 資金繰りの改善に必要なポイント
株式会社フォーサイツコンサルティング/
執行役員
五十嵐 雅祥
五十嵐 雅祥
(一財)レジリエンス協会幹事。1968年生まれ。外資系投資銀行、保険会社勤務を経て投資ファンド運営会社に参画。国内中堅中小製造業に特化した投資ファンドでのファンドマネジャーとしてM&A業務を手掛ける。2009年より現職。「企業価値を高めるためのリスクマネジメント」のアプローチでコンプライアンス、BCP、内部統制、安全労働衛生、事故防止等のコンサルティングに従事。企業研修をはじめ全国中小企業団体中央会、商工会議所、中小企業大学校等での講師歴多数。
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□事例:業績好調で黒字なのに倒産!?
A社は土木事業を主力としている設立50年を超える中堅建設業です。今から10年前の2009年に東証1部に上場を果たし、近年の全国各地の自然災害に伴う復興事業に加え、東京オリンピック関連事業も重なり、足元の業況はフル稼働が続いている状態で、昨年度決算では200億円を超える売上高を計上しました。
しかしながら、土木事業の好況に伴う人件費の高騰や、砕石や生コンといった資材の供給不足などにより価格が急騰していることから、事業に係るコストが膨らみ続けていました。A社では、今月末に必要とされた運転資金の一部について金融機関に新規借り入れや借り換えを申し込みましたが、銀行担当の財務部長によれば「金融機関の融資姿勢が厳格化されている。特に建設業や不動産業に対する評価は低い」とのことで、拒否される可能性が高いとのことです。
A社は今月末、一般運転資金に加え、社員への賞与の支払いおよび法人税の納付も控えているために平常月より多めの資金が必要になりますが、その調達のめどが立っていません。財務部では、多くの社員が「このままではまずい。業績は好調で黒字なのに、今月のキャッシュのめどが立たないだけで、まさか倒産か……?」と青ざめています。
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