2019/03/14
危機発生時における広報の鉄則
2か所で情報を発信しないこと
工場火災などで、もっともやりがちな失敗は、本社と工場の2カ所で会見をしてしまうことです。記者は、工場と本社の両方に殺到しますので、両方で対応しようと同じ情報を2カ所で別々に発信してしまうのです。これをすると、本社と工場で微妙に情報が食い違ってしまい、情報が錯綜するリスクが発生します。危機時には情報発信を一本化し、その現場が十分安全ならその工場で、あるいは「工場近くの施設」など現場から遠くない場所で情報発信した方がよいでしょう。
このケースにおける最も重要なステークホルダーは工場周辺の住民であり、彼らの健康にかかわる危険性について情報提供をする、記者会見を行う、ということが一番の肝となります。
地域住民を意識したメッセージを
企業の場合、平時は経済部や産業部の記者と接することが多いことでしょう。したがって、一般的な平時の質問事項は、新サービスや新製品、新システム、売上といった経済活動に関するものになりますが、事故や火災発生時には、社会部の記者にも対応しなければなりません。特に工場火災では地元紙の記者が詰め寄ってきます。質問の意図も、事故の原因や対応状況だけでなく、社会面に載るような地域住民の感情にフォーカスしたものになります。工場で働く従業員の多くも地域住民に含まれますから、企業としては、記者の背後には、従業員とその家族、彼らを取り巻く地域の人々がいるということを強くイメージして情報を発信する必要があります。
では、問題です。
記者:「原因がわかるまで全て操業停止ですか?」
社長:「いえ、問題のないラインは停止しません。業績への影響を最小限にいたします。」
さて、このやりとりはどう見えますか? 株主総会では違和感がないやりとりですが、工場火災の記者会見場ではこれでは紛糾してしまいます。「地域住民の不安が払拭できないうちに稼動とは何事だ!」と。では、どのように回答すればよいのでしょうか。
具体的なコメント例は、私のトレーニング機密になるのでここでは控えますが、ヒントは、地域住民と相談しながら進める姿勢にあります。
(了)
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