記者は直後から殺到します! イラスト:フォトライブラリー

ある大手部品メーカーの工場で正午に火災が発生しました。直後から報道各社の記者が一斉に取材に動き出し、17時に同社では謝罪文を配布、記者会見が行われたのが21時という事例があります。

一見、迅速な対応に見えますが、火災発生時に社長と広報部長が出張で機内にいたため、記者会見を開くのかどうか、といった問い合わせに即答できず、報道各社が混乱。結果として詳しい状況を何時間も報道できず、住民への情報提供が滞りました。

大規模な事故や火災の場合には、消防と警察が現場に急行しますが、記者もすぐに情報を嗅ぎ付け、ほとんど同時に現場に到着します。工場からモクモクと黒煙が上がっていれば絵になりやすいため、すぐにテレビ中継されたり記事にされてしまいます。その際、正しい情報を出さなければ、憶測だけで情報が報道されてしまうのです。

「現場ですら状況がわかっていないのに、なぜ外部に情報発信なんかできるのか」と疑問に思われるかもしれませんが、大規模な事故や火災では最初の情報提供を2時間以内に行うというのが目安になります。短すぎると思われるかもしれませんが、2時間という目標を立てることで、かえってスタッフは動きやすくなります。

最もいけないのは、何時にどこから、どのような形で情報が出てくるのかが全くわからない状況になってしまうことです。

「いつどこで何が起こったのか」「けが人はいるのか」「爆発など2次災害の危険性はあるのか」「対策(調査)本部を立ち上げた」といった簡単な状況説明でよいのです。仮に記者会見ができる状態でなければ、「記者レク」といって質問を受けないで伝えるだけの対応でも構わないですし、自社のウェブサイトに掲載するのでもいいでしょう。