2019/03/18
安心、それが最大の敵だ

GHQ意識したPR動画
昭和21年3月、石川は、東京の人口を300万人に抑えるため、周辺の衛星都市に人口を吸収し、第一次計画としては、半径40km圏内にある諸都市に諸施設を分散収容することとし、第二次計画では、それを半径100km圏内まで拡大する方針を固めた。これらの都市に合計400万人を収容することによって東京の膨張を防げると考えた。
同年に2冊の図書を刊行した。「新首都建設の構想」(戦災復興本部)、「都市復興の原理と実際」(光文堂)である。
昭和22年(1947)夏、石川は映画「二十年後の東京」を企画立案する。多才な彼の一面を示す作品は、16mmのフィルムで上演時間は30分である。(財)日本観光映画社制作・企画東京都都市計画課となっている。ビデオは「イギリスの大臣が嘆いて、紙の都市が欲しいと言った」から始まる。焼け野原の航空撮影に続いて「都市計画や復興の良い機会」、「日本には友愛の精神がない」「民主的でもない」、「東京では公有地16%、私有地84%」などのテーマが映像をまじえて展開される。最後に「一にも二にも土地が欲しい・・・」と訴えて映像は終わる。「民主主義樹立のために都市計画を理解して欲しい」との再三の訴えは検閲をするGHQを意識したものであろう。
◇
「GHQ民政局から、都心に残されている大量のガラ(がれきの俗称。残骸、残土など)をいち早く排除して都市計画を提示せよ、と矢の督促なのだ。そこで掘割や河川をガラの捨て場にあて埋め立てれば、ガラの排除と用地取得の一挙両得になる。GHQにNOは言えない。直ちに取りかかって欲しい」
東京都庁知事室で安井誠一郎知事は、目の前に立つ都市計画課長・石川栄耀に眉を吊り上げて命じた。石川は、学生時代から下町を散策してわずかに残された江戸情緒に親しんできた。その情緒を伝えるものが都心を流れる掘割や河川であった。都会の水辺の必要性を誰よりも訴えていたのが他ならぬ都市計画家石川であった。都会の水辺や緑の空間は是非守りたいと考えて来た。その石川に「川を殺せ」との厳命である。
「掘割や河川を埋め立ててしまいますと都会の風情がなくなります。水辺公園(リバー・サイド・パーク)が生まれません。防災上問題を残します。しかもガラの排除には国からの補助金も出ないと聞いています」石川は賛成しかねるとの考えを強調した。
「君、そんな悠長なことを言っている場合じゃないんだ。GHQには逆らえないことくらい君も知っているだろう。すぐ対応してくれたまえ。またGHQは新たな都市計画を都民に積極的にPRしろとも命じている」。
安心、それが最大の敵だの他の記事
おすすめ記事
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/01
-
-
-
-
-
全社員が「リスクオーナー」リーダーに実践教育
エイブルホールディングス(東京都港区、平田竜史代表取締役社長)は、組織的なリスクマネジメント文化を育むために、土台となる組織風土の構築を進める。全役職員をリスクオーナーに位置づけてリスクマネジメントの自覚を高め、多彩な研修で役職に合致したレベルアップを目指す。
2025/03/18
-
ソリューションを提示しても経営には響かない
企業を取り巻くデジタルリスクはますます多様化。サイバー攻撃や内部からの情報漏えいのような従来型リスクが進展の様相を見せる一方で、生成 AI のような最新テクノロジーの登場や、国際政治の再編による世界的なパワーバランスの変動への対応が求められている。2025 年のデジタルリスク管理における重要ポイントはどこか。ガートナージャパンでセキュリティーとプライバシー領域の調査、分析を担当する礒田優一氏に聞いた。
2025/03/17
-
-
-
なぜ下請法の勧告が急増しているのか?公取委が注視する金型の無料保管と下請代金の減額
2024年度は下請法の勧告件数が17件と、直近10年で最多を昨年に続き更新している。急増しているのが金型の保管に関する勧告だ。大手ポンプメーカーの荏原製作所、自動車メーカーのトヨタや日産の子会社などへの勧告が相次いだ。また、家電量販店のビックカメラは支払代金の不当な減額で、出版ではKADOKAWAが買いたたきで勧告を受けた。なぜ、下請法による勧告が増えているのか。独占禁止法と下請法に詳しい日比谷総合法律事務所の多田敏明弁護士に聞いた。
2025/03/14
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方