南海トラフ巨大地震による災害関連死者数が初めて試算され、約2万6000~5万2000人に上るとの推計結果が出た。東日本大震災と能登半島地震を踏まえ、避難者1万人当たり40~80人の被害が生じるとみて算出。ただ、政府の作業部会は、南海トラフ地震は被災地域が広域にわたるだけに、実際の被害がさらに拡大する恐れがあると指摘している。
 東日本大震災は岩手、宮城両県の状況を踏まえた。東京電力福島第1原発事故の影響で広域かつ長期の避難を余儀なくされた福島県での状況を参考にすると、避難者1万人当たり210人の災害関連死が発生し、その死者数は約13万6000人にまで膨らむ。
 災害関連死の主な原因は、避難生活に伴う心身の負担のほか、災害前と同様の医療や看護、介護サービスが受けられなくなることによる健康状態の悪化など。入院に対応できる医療は最大で約15万5000人分不足するほか、人工透析への影響が懸念される停電や断水といったライフライン被害に直面する透析患者は約12万人に達する。これらは災害関連死につながる可能性がある。
 被害想定では、最も多い場合、車中泊などを含めた避難者数が約1230万人に膨らむ。政府は、能登地震で災害関連死者が多かったことを教訓に、トイレや炊き出し設備、ベッドを確保するなどして、生活環境の改善に取り組む。 
〔写真説明〕能登地震の指定避難所に設置された段ボールベッド=2024年1月、石川県輪島市

(ニュース提供元:時事通信社)