イメージ:写真AC

 

前回に続き、ピーター・ヒンセンさんのお話を伺っていきます。COVIDという特殊な時期の終わりに突如現れたNever Normal時代。フェニックスのように蘇り、舞い上がっていくにはどうすればよいでしょうか?

さっそく、続きを聴いてみましょう。

(引用: 小見出し、および太字は筆者による)


The Never Normal

Peter Hinssen, innovator and thought-leader 
Steve Durbin/CEO, Information Security Forum
5 March 2024
The ISF Podcast

(前回からの続き)

AI+人による加速

スティーブ・ダービン 先ほどテクノロジーや人工知能について触れられましたが、私たちの社会はテクノロジーに依存しすぎているとお考えでしょうか?

ピーター・ヒンセン 個人的にはそう思っていませんが、私は根っからの技術者なので、今でも何か起こるたびに興奮します。私自身も、私たちが築き上げたものは巨人の肩(先人の偉大な業績)の上に成り立っているのだと実感しています。ですから、私たちはその上に積み重ねていくのです。そしてもし、その根底にあるメカニズムのいくつかが壊れてしまったら、積み重ねていくことがどれほど難しいことなのかがわかるのです。

たとえば、先のパンデミック時にみなさんが経験されたと思いますが、我が家では、パンデミック時にインターネットがダウンすると、大混乱が起きたのです。ですから、人々はテクノロジーに非常に依存するようになります。テクノロジーは機能していなければなりません。デジタル機器の故障は許されないのです。その一方で、私たちは実際にテクノロジーの可能性を引き出し、そのツールを使ってこれまで以上に生産的な仕事ができるようになる段階に差し掛かっていると思います。例えば、AIといったものにものすごく興奮するのはそのためです。

長年にわたって、デジタルテクノロジーは生産性という面では、ある意味期待外れでした。社会はかつてないほど多くのツールを手に入れましたが、本当に生産性は向上したのでしょうか? 疑わしいですね。だって、私たちのほとんどはいまだにマイクロソフト・ワードを、昔の機械式タイプライターと同じように使っているのですから。唯一の違いは、修正液が要らなくなったことです。

しかし、私たちは今、人間+機械の組み合わせが、実際に生産性を向上させるものとして目に見える段階にまで来ていると思いますし、デジタルテクノロジーが登場してから30年、40年で初めて、非常に大きな変化を見ることができるかもしれません。デジタルが当たり前になるまでが第一段階だったと思いますし、それが企業にとってのベースキャンプです。各社には今、身近にあるデジタルを実際に活用できる可能性を持っていると思います。ですから、今でもまだワクワクします。しかし、もしもうまく活用できなければ、それは大きな課題となります。

ChatGPTを例にとってみましょう。2022年11月30日にリリースされたとき、まず私やあなたのような人たちが使い始め、次に学生たちがどんどん使い始めました。統計を見たところ、22~23年度の論文や学位論文の60~70%が生成AIを使って書かれたそうです。これは過小評価だと思います。私は90%以上に近いと思っています。しかし、最初の頃は ChatGPTでもそうでしたが、世の中の熱狂に飲み込まれてしまいましたよね。あまりにも多くの人が使い始めたので、サーバーがダウンすることもありました。私の友人の一人は教師です。彼女のところに、ChatGPTがダウンしたので、宿題を提出できませんと言ってきた生徒がいたそうです。今や社会がテクノロジーに頼り切っていることがわかりますね。