デジタルリスクの地平線 ― 国際的・業際的企業コミュニティの最前線
サイバー犯罪ニュースの背景
いったいサイバー犯罪は、いつの間にお茶の間に流れるニュースでも取り上げられるようになったのでしょうか。オレオレ詐欺のレベルから、企業の事業資金ひいては国庫に穴を空けてしまうほどの金額の強奪にいたるまで、大小さまざまな事件が世界中で日々起きていることが報道される時代に、いつしかなっています。そんなニュースの背景を理解することは、事業経営上のリスクを見通すうえでも有意義なことではないかと考えます。
昨年”The Lazarus Heist: From Hollywood to High Finance: Inside North Korea's Global Cyber War”(邦訳「ラザルス:世界最強の北朝鮮ハッカー・グループ」)という本を世に問うた英国を代表するテクノロジージャーナリストで、20年以上にわたってテクノロジーや金融犯罪を取材して来られたジェフ・ホワイト氏の本を読まれた方もおられると思います。
日本政府も名指しで注意喚起を促す隣国のハッカー集団の実態を追ったこの本は「なぜ北朝鮮がサイバー犯罪に傾倒しているのか」「なぜ技能が秀でているのか」「なんのために世界中から大金を盗んでいるのか」「どういう政治的・経済的構造がサイバー犯罪の背景となっているのか」をお知りになりたい方は、ご一読されることをお勧めします。
なお、本の概要は、下記のオンライン記事でも簡単に読むことができます。
東洋経済オンライン「『北朝鮮ハッカー』エリート集団の奴隷的な扱い」
https://toyokeizai.net/articles/-/660383
さて、同氏は昨年に続き、今年の6月に”Rinsed - From Cartels to Crypto: How the Tech Industry Washes Money for the World's Deadliest Crooks” という好著を世に出されています。エコノミスト誌の評価も「引き込まれる」と、極めて好意的です。
この極めて刺激的な本の出版を前に、今年の春ごろ、ISF CEOのスティーブ・ダービンが同氏にインタビューしています。その内容が最近、ISFポッドキャストで一般にも公開されましたので、斯界の第一人者の生の声を、日本語の耳で聞いてみたいと思います。なお、少し長いので、2回に分けてお届けします。
(以下、引用)
ジェフ・ホワイト - カルテルから暗号へ: マネーロンダリングのデジタル化
Geoff White & Steve Durbin/ISF
5 November 2024
ISF Podcast
スティーブ・ダービン:ジェフさん、お目に掛れて嬉しいです。本日はポッドキャストにご出演いただき、誠にありがとうございます。
ジェフさんは、サイバー、暗号、金融など、テクノロジーと組織犯罪の全般にわたって長年取材を続けていらっしゃいますね。おそらく、リスナーの中には、BBCのポッドキャスト『THE LAZARUS HEI$T(ラザロ強盗)』シリーズや他のご著書などについて、ご存じない方もいらっしゃると思いますので、このテーマに関わるようになられた経緯について、少しお話いただけますか。
非常に興味深い問題だと思いますが、このテーマに惹きつけられた理由や、ご興味を持たれている点についてお話いただけると嬉しいです。
ジェフ・ホワイト:とてもいいご質問ですね。私はジャーナリストになってかなり経ちますが、チャネル4 ニュースという番組でテクノロジーを担当していました。テレビのニュースがどのように成り立っているかというと、ある一定の時間、非常に限られた時間が与えられています。
チャンネル4 ニュースについて言えば、尺が長く、50分もあるいい番組です。しかし、基本的にその50分が終わってしまえば、はいそれまで。画面にはクレジットが流れ、それでおしまいです。だから、番組の早いところで放送されればいいのですが、番組の遅い時間の順番にあたると、番組の最初のほうでニュースが割り込んできて、はい降板です、と言われる危険性があります。
テクノロジー系のジャーナリストになってわかったのは、私たちがやっている記事は、当時でいえば、AppleのポッドキャストやiPodの発売などの話題に押しのけられがちだったということです。そこで私は、番組内でもっといいポジションに行くためには、やはり話題性のあるニュースが必要だと考えたのです。
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