京都はいつまで「京都」でいられるのか(Adobe Stock)

2030年最悪シナリオ、今回は旅行業を取り上げる。インバンドで沸く各地の観光地。このまま好景気が続けばと願わずにはいられない。しかし、残念ながら気候変動がもたらすのは、悲劇的な結末だ。

旅行業界が抱える気候リスク

5年後である2030年、次のような情景を想像してみよう。場所は京都で季節は夏だ。

かつての観光地の賑わいはどこへ行ったのだろう。猛烈な高温の続く京都では、歴史ある寺院は柱や壁が強烈な太陽光で色褪せ、庭園の緑も茶色に変色し、昔のようなみずみずしい美しさを損ないつつある。

けたたましい救急車のサイレンが絶えまなく続く。なぜなら熱中症や脱水症にかかった人々を搬送するためだ。多くのインバウンド旅行者たちも、この苛酷な気候に幻滅し、彼らが訪問するのは短いシーズンオフの時期に限られるようになった。

2030年夏、京都で見られるのはこんな光景かもしれない。果たしてこれは、持続可能な観光の姿なのだろうか?

気象条件と旅行者のマインドは密接に関連しており、極端な気温や天候は旅行の満足度の高低に大きな影響を及ぼす。誰かが「日本の夏は湿度が高く、地獄のような暑さだ」とソーシャルメディアに書き込めば、瞬く間にその情報は拡散される。

また異常気象は、旅行者の円滑なスケジュールを台無しにする。鉄道・バス・飛行機などの移動手段がスムースに機能するのは、予測可能なノーマルな気象条件が揃っていてこそである。異常気象が常態化して運行ダイヤが頻繁に狂うため、旅行者は予定したよりも多くの時間をムダな待機やムダな移動、ムダな支出に費やすことになる。「公共交通機関が頻繁に止まって当てにならない日本」と名指しで、酷評されることになる。