生成AIガイドラインに欠かせないもの
第48回:IT後進国から脱却できるのか(8)

多田 芳昭
一部上場企業でセキュリティー事業に従事、システム開発子会社代表、データ運用工場長職、セキュリティー管理本部長職、関連製造系調達部門長職を歴任し、2020年にLogINラボを設立しコンサル事業活動中。領域はDX、セキュリティー管理、個人情報管理、危機管理、バックオフィス運用管理、資材・設備調達改革、人材育成など広範囲。バイアスを排除した情報分析、戦略策定支援、人材開発支援が強み。
2023/09/28
再考・日本の危機管理-いま何が課題か
多田 芳昭
一部上場企業でセキュリティー事業に従事、システム開発子会社代表、データ運用工場長職、セキュリティー管理本部長職、関連製造系調達部門長職を歴任し、2020年にLogINラボを設立しコンサル事業活動中。領域はDX、セキュリティー管理、個人情報管理、危機管理、バックオフィス運用管理、資材・設備調達改革、人材育成など広範囲。バイアスを排除した情報分析、戦略策定支援、人材開発支援が強み。
ここまで本シリーズをお読みいただいている方であれば、AIとはどのようなもので、利活用できれば大変便利なツールであると同時に、使い方を誤れば種々のリスクが発生することはご理解いただいているだろう。
そのリスクは、ITすべてに共通のものもあれば、AI特有のものもある。巷で策定が必要だと言われるガイドラインは、AI特有のリスクという観点で定められたものであり、AIの特性を理解していれば、当たり前の内容が記述されているに過ぎないとお気付きであろう。
しかし、当たり前のことが書かれてあるガイドラインなのだが、問題もある。理由は言うまでもないだろうが、ガイドラインとして文字化し定義した瞬間に、その抜け道を通るなど、本来の趣旨と反する行為が発生するリスクも生じるのが世の常であるからだ。
法律であれば、法の抜け道を通る行為は違法性がないとされ、その時点では許容されるだろう。だが、ガイドラインのように法的縛りがなく設定されるルールの場合は事情が異なる。たとえガイドラインに書いてあるままに忠実に運用したとしても、その目的を違えて問題が生じるのであれば、それは不正と言われても仕方がない。結果がすべてなのである。
問題発生の原因は、ガイドライン策定時の記述不足かもしれないし、運用想定の不足かもしれない。ガイドライン通りの運用であったとしても、問題発生時には何の言い訳にもならないということは理解しておく必要がある。
わかりやすい事例で説明しよう。例えば、自社製品の使用時の安全を確保するために、製造時の検査基準や耐久テスト基準などを設定し、確実にそれらを守って出荷されたとしても、市場で安全性の問題が発生すれば責任は逃れられない。その場合、自社検査はクリアしているから問題ないと説明しようものなら炎上は必須であろう。
当然そこには、予期せぬ使用方法や環境の問題もあるだろう。だが、あらかじめその想定がなされ、禁止事項としていない限り、自社検査基準自体の誤りであり、リスク想定が甘いと判断される。
つまり、ガイドラインの例として提示されているのは、あくまで広く一般的に想定される策でしかなく、そのままで使えるわけではない。一般例として参考にしながらも、自社の運用内容、環境条件、関連業務との関係なども含めて、あくまで自社基準のリスク想定を行っていなければ意味はない。
そして、それらの自社条件は生モノであり、時間とともに変化するのも当然だ。定期的な見直し、確認作業は必須である。
再考・日本の危機管理-いま何が課題かの他の記事
おすすめ記事
自社の危機管理の進捗管理表を公開
食品スーパーの西友では、危機管理の進捗を独自に制作したテンプレートで管理している。人事総務本部 リスク・コンプライアンス部リスクマネジメントダイレクターの村上邦彦氏らが中心となってつくったもので、現状の危機管理上の課題に対して、いつまでに誰が何をするのか、どこまで進んだのかが一目で確認できる。
2025/04/24
常識をくつがえす山火事世界各地で増える森林火災
2025年、日本各地で発生した大規模な山火事は、これまでの常識をくつがえした。山火事に詳しい日本大学の串田圭司教授は「かつてないほどの面積が燃え、被害が拡大した」と語る。なぜ、山火事は広がったのだろうか。
2025/04/23
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/22
帰宅困難者へ寄り添い安心を提供する
BCPを「非常時だけの取り組み」ととらえると、対策もコストも必要最小限になりがち。しかし「企業価値向上の取り組み」ととらえると、可能性は大きく広がります。西武鉄道は2025年度、災害直後に帰宅困難者・滞留者に駅のスペースを開放。立ち寄りサービスや一時待機場所を提供する「駅まちレジリエンス」プロジェクトを本格化します。
2025/04/21
大阪・関西万博 多難なスタート会場外のリスクにも注視
4月13日、大阪・関西万博が開幕した。約14万1000人が訪れた初日は、通信障害により入場チケットであるQRコード表示に手間取り、入場のために長蛇の列が続いた。インドなど5カ国のパビリオンは工事の遅れで未完成のまま。雨にも見舞われる、多難なスタートとなった。東京オリンピックに続くこの大規模イベントは、開催期間が半年間にもおよぶ。大阪・関西万博のリスクについて、テロ対策や危機管理が専門の板橋功氏に聞いた。
2025/04/15
BCMSで社会的供給責任を果たせる体制づくり能登半島地震を機に見直し図り新規訓練を導入
日本精工(東京都品川区、市井明俊代表執行役社長・CEO)は、2024年元日に発生した能登半島地震で、直接的な被害を受けたわけではない。しかし、増加した製品ニーズに応え、社会的供給責任を果たした。また、被害がなくとも明らかになった課題を直視し、対策を進めている。
2025/04/15
生コン・アスファルト工場の早期再稼働を支援
能登半島地震では、初動や支援における道路の重要性が再認識されました。寸断箇所の啓開にあたる建設業者の尽力はもちろんですが、その後の応急復旧には補修資材が欠かせません。大手プラントメーカーの日工は2025年度、取引先の生コン・アスファルト工場が資材供給を継続するための支援強化に乗り出します。
2025/04/14
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方