写真を拡大 2017年からLINEアプリでの情報のやりとりは暗号化がほぼ100%となっている(出典:LINEホームページ)

「サイバー防災訓練」で啓発

また、同時期に芸能人の騒動で「クローンiPhone」がクローズアップされた。これはiPhoneのバックアップに用いるiTunesを使い、元のiPhoneと全く同じ中身の「クローンiPhone」を作成。どちらの端末からも同じアカウントを使え、情報流出につながった。2016年2月に同じく対策が行われ、複数のスマートフォンから同じアカウントを使用することはできなくなった。

ただし、アカウント乗っ取りはさらに巧妙化しており、ある電話番号でアカウントを勝手に作成。知人を装って、その電話番号の持ち主から端末に届くSMSを聞きだし、認証をくぐり抜けるケースも出てきた。LINEはひとつの電話番号でひとつのアカウントしか使えないので、アカウントが勝手に作られれば実質乗っ取られることとなる。

このケースへの対応のため、2017年に「サイバー防災訓練」を実施。これは、乗っ取りを疑似体験できるもので、友人になりすました人物が様々な情報を聞き出して乗っ取ってしまう動画が流される。「乗っ取り対策はいたちごっこ」と市原氏は難しさを語る。LINEではさらに電話番号やSMSの聞き出しへの対策を行う方針だという。

最近はスパムも巧妙化している。専用アカウントを作り、偽ブランド品販売などのPRを行うもの。スパムに用いられるアカウント作成や配信はほぼ自動化されており、市原氏は「人の手での対策ではもはや追いつかない」という。そこで1年以上前からデータサイエンスの専門家の協力を得て、機械学習でこれまでのスパムと似たパターンを割り出し、アカウントを無効化するという対策をとっている。