年度末に発行される各種報告書は、実践的で役に立つものが多い(イメージ:写真AC)

年度末に発行された国等による報告書から、引き続き重要なものを紹介していく。今回は内閣府の「災害ケースマネジメント実施の手引き」(以下、「手引き」)を取り上げる。

近年の災害では、多くの被災者が住宅被害だけでなく、医療、福祉、雇用、DV、不登校などの複合的被害を受ける。これを被災者が自ら縦割りの行政組織へ相談し、支援を受けるのは非常に困難だ。

「災害ケースマネジメント実施の手引き」(内閣府、令和5年3月) 内閣府ホームページよりhttps://www.bousai.go.jp/taisaku/hisaisyagyousei/case/index.html

そこで、被災者へのアウトリーチによるアセスメント、支援関係者によるケース会議と方針作成、伴走型支援の継続などにより自立支援を支えようというのが災害ケースマネジメントだ。日常でも重層的支援体制整備事業が始まり、このような多重の困難さを抱えた住民への支援がなされるようになった。

内閣府は、令和4年度に「災害ケースマネジメントの手引書作成に関する有識者検討会」を設置し、この検討会で4回にわたって議論した。加えてさまざまな機会で有識者委員から意見聴取し、自治体やNPOなどの意見も踏まえて作成したものが今回の「手引き」。300ページの大部になったが、実践的で役立つものと考えている。


災害ケースマネジメントの定義とアウトリーチ

手引きでは、災害ケースマネジメントは被災者の主体的な自立・生活再建のプロセスを支援するものであり「被災者一人ひとりの被災状況や生活状況の課題等を個別の相談等により把握した上で、必要に応じ専門的な能力をもつ関係者と連携しながら、当該課題等の解消に向けて継続的に支援することにより、被災者の自立・生活再建が進むようマネジメントする取組」と定義している。

この際に、避難所や役所に窓口を設置して相談を待つだけでなく、行政や支援団体が被災者を訪問して積極的に支援が必要な人を発見し、困りごとを引き出すアウトリーチ活動が重要だ。