第52回:意外と身近なサイバー攻撃の発生状況とトレンド
BCI Cyber Resilience Report 2018
合同会社 Office SRC/
代表
田代 邦幸
田代 邦幸
自動車メーカー、半導体製造装置メーカー勤務を経て、2005年より複数のコンサルティングファームにて、事業継続マネジメント(BCM)や災害対策などに関するコンサルティングに従事した後、独立して2020年に合同会社Office SRCを設立。引き続き同分野のコンサルティングに従事する傍ら、The Business Continuity Institute(BCI)日本支部事務局としての活動などを通して、BCMの普及啓発にも積極的に取り組んでいる。一般社団法人レジリエンス協会 組織レジリエンス研究会座長。BCI Approved Instructor。JQA 認定 ISO/IEC27001 審査員。著書『困難な時代でも企業を存続させる!! 「事業継続マネジメント」実践ガイド』(セルバ出版)
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BCMの専門家や実務者による非営利団体 BCI(注1)は、2018年6月に「Cyber Resilience Report 2018」(以下、「本報告書」と略記)を発表した。これは BCI 会員を主な対象として実施した、サイバーセキュリティに関するアンケート調査の結果をまとめたものである。サイバーセキュリティに関する調査報告書は今回で3回目(注2)であり、2017 年6月に発表された第2回からは、BCMやITの災害復旧に関するソリューション・プロバイダーであるSungard Availability Services社からの支援を受けている。
図1は回答者が直近の12カ月間に経験した、サイバーセキュリティに関するインシデントの種類である(注3)。2017年版で3位に入っていた「スピアー・フィッシング」が、同じく1位だった「フィッシングやソーシャル・エンジニアリング」に統合され、これが今回も引き続き1位となっている。2位の「マルウェア」は前回と同じだが、3 位には「ランサムウェア」が入っていることには注目すべきであろう。ランサムウェアは 2016年版では選択肢すらなかったものの、2017年版で6位に急浮上したものであり、ここ 1~2年で急速に増加していることが分かる。報告書の表紙(本記事のトップ画像)もそのようなトレンドを踏まえて描かれたのであろう。
また図2は、サイバーセキュリティに関する主なトピックに関して、どのトピックに関心があるかを尋ねた結果である。これは2017年版には無かった設問だが、サイバー攻撃による組織のレピュテーション(注4)への悪影響に対する関心が特に高いことが分かる。次いでInternet of Things(IoT)、物理的セキュリティへの脅威となるサイバー攻撃(例えば配電網や病院などの施設を機能不全に陥れるものなど)などが注目されている。
なお、回答者の中で直近の12カ月間にサイバーセキュリティに関する何らかのインシデントを経験した人の割合は、前回調査とほぼ同水準の66%である。読者の中でこのようなインシデントをまだ経験していない方々にとっては、サイバー攻撃の脅威はあまり身近に感じられないかもしれないが、実は意外と頻繁に起きているのである。本報告書も参考にしつつ、サイバーセキュリティへの備えについても決してIT部門に任せっきりにせずに取り組んでいただきたいと思う。
■ 報告書本文の入手先(PDF21ページ/約1.5MB)
https://www.thebci.org/resource/bci-cyber-resilience-report-2018.html
注1)BCIとはThe Business Continuity Instituteの略で、BCMの普及啓発を推進している国際的な非営利団体。1994年に設立され、英国を本拠地として、世界 100カ国以上に 8000 名以上の会員を擁する。 http://www.thebci.org/
注2) 本報告書の2016年版については、紙媒体の「リスク対策.com」vol. 56(2016年7月発行)の連載記事「レジリエンスに関する世界の調査研究」第 15回で紹介させていただいた。また 2017年版については本連載で2017年7月 18日に紹介させていただいた。 http://www.risktaisaku.com/articles/-/3301
注3)サイバー・インシデントの種類については 2017年7月18日に紹介させていただいた前回調査の紹介記事の図1をご参照いただきたい。 http://www.risktaisaku.com/mwimgs/e/b/-/img_eb3e2f92d40fd2e515312a636ae11f25494382.jpg
注4)「レピュテーション」(reputation)とは組織や個人に対する、評判や信用などを含む総体的な認知である。これまでBCI から発表されている各種報告書から、BCM関係者の間でレピュテーションに対する関心が高くなってきていることがわかっている(例えば2017年9月26日に紹介した BCI Supply Chain Resilience Report 2016 など:http://www.risktaisaku.com/articles/-/3778)。
(了)
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