近代組織が抱える課題と解決策をスポーツから考える(写真:写真AC)

はじめに

2021年7月から9月にかけて、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、東京2020大会)が開催されました。皆様ご存じのとおり、本来、東京2020大会はその名の通り2020年に開催される予定でしたが、新型コロナウイルスの流行により1年の延期が決定されました。

東京2020大会が遺したものは(写真:写真AC)

そして、その1年後に開催に至ったわけですが、我が国において新型コロナ禍が拡大していた局面で開催されたこともあり、開催にあたって賛否両論の激しい議論を巻き起こすことになりました。こういった社会情勢に鑑みれば、東京2020大会の開催は、祝賀ムード一色というにはほど遠い状況であったといわざるを得ないでしょう。

しかしながら、平時とは異なったさまざまな制約が課せられた状況においても、アスリートが東京2020大会開催の喜びを噛みしめて、前向きに、真摯に競技に向き合う姿勢に、開催の当否に関する立場を超えて多くの人々が感動したことも紛れもない事実です。

そして、この感動の根底には「スポーツ・インテグリティ」と呼ばれるものの存在があると私は考えています。

※以上、拙稿「地方公共団体におけるスポーツ行政―アンチ・ドーピングに焦点を当てて―」(政策法務Facilitator vol.72収録、第一法規)の一部を加筆・修正

本年2022年2月・3月には、北京2022冬季オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、北京2022大会)が開催されます。北京2022大会についても、開催国である中華人民共和国における人権状況等への懸念から、いわゆる外交ボイコットが展開されるなど、その開催に関して懸念事項が横たわっているといえます。

しかし東京2020大会と同様、北京2022大会でもきっと、アスリートの真摯な姿に、立場を超えて多くの人々が感動することになるでしょう。

スポーツ・インテグリティとは(写真:写真AC)

本連載においては、スポーツの感動の源泉たるスポーツ・インテグリティという概念を手がかりにしつつ、近時の企業経営・組織運営において重視されているガバナンスやコンプライアンスについて、そのあるべき姿を考えていきたいと思います。