3.訓練の結果
今回の個別行動は、いずれも、課題を与えられたグループが判断や作業を行い、その結果を他のグループや外部機関に連絡する形となっていた。表2は、11月21日の訓練における個別行動の処理時間について当該行動を行ったグループ別に集計した結果である。現場グループの処理時間がもっとも長い。これは、同グループが担当した10個の個別行動のうち、2つにおいて特に時間がかかったことによる。表3は、連絡先別に個別行動の処理時間を集計した結果である。DMOC内のグループでは、受援・物資グループあての連絡に時間を要している。

これは、評価対象とした全5件の個別行動のうちの2件において特に時間を要したためである。以上に時間を要したと書いた個別行動は、作業や意思決定自体に多くの時間を要するものではなかった。このため、他の業務に追われて連絡が遅れたり、自分の班ではなく他の班から連絡が行われるとプレーヤーが思い込んでいたり、さらには、連絡の必要がないとプレーヤーが考えていた可能性がある。

表3で外部機関への連絡を行った事例を見ると、北九州市内の機関と比べ、福岡県関係の機関への連絡に多くの時間を要したことがわかる。この連絡先は、福岡県医師会や福岡県DMAT事務局である。これらについては、連絡手続きへの習熟が不十分であった可能性が考えられる。

つづいて、2回の訓練に共通に含まれていた個別行動について処理時間を比較する。対象は、合計で14個の重要な状況付与に対する43個の個別行動である。なお、訓練終了間際に振り込まれ、時間的に完了が難しかった29番の状況付与(表1参照)は、対象外とした。

2回目の訓練において所要時間が10分以上短縮された個別行動は、計6個であった。一方、所要時間が10分以上延びたものは、計7個となった。これ以外の29個の個別行動の所要時間には、大きな変化が見られなかった。個別行動のうち、いずれかの訓練で最後まで終了しなかった3個を除いて所要時間の平均値を比べると、1回目訓練では13.4分、2回目訓練では14.1分であった。つまり、比較可能な部分の平均処理時間には大きな差がない。

図5は、所要時間に大きな改善が見られた状況付与(7番)の例である。この図では、最初の担当部署である現場グループの処理状況を示している。1回目の訓練の際には、DMATの選定や編成が当該グループの業務であることが明確に認識されておらず、時間を要した。

2回目訓練では、この点が大きく改善された。このほか、1回目の訓練の際には、連絡先のメールアドレスが古くて使えない、等の資料の不備も生じており、訓練を繰り返すことにより、このような事務手続き上の課題は、ほぼ解消されている。なお、2回目の訓練において大きく所要時間が延びた個別行動としては、上位部署や関連部署に対する業務の完了報告が目立つ。また、2回目の訓練において最後まで完了しなかった2つの個別行動は、いずれも調整グループが担当したものであった。この背景としては、プレーヤーが完了報告よりも他の業務の遂行を優先した可能性があり、一概に誤りとは言えない。完了報告の意義と必要性についてプレーヤーを交えた検討が必要と思われる。