2021/07/26
気象予報の観点から見た防災のポイント
北海道豪雨―8月の気象災害―
台風から逸脱した雲域
図4は、8月5日9時の地上天気図と気象衛星画像(赤外)である。前線が北海道を南北に貫いている。前線のキンク(折れ曲がり)はなくなり、全体として緩やかなS字カーブの前線が描かれている。変曲点(曲率が変化するところ)は北海道北部付近にあり、それより北が温暖前線、南が寒冷前線である。温暖前線は12時間前より西進しており、寒冷前線は東進している。前線の全体が、変曲点を支点として、反時計回りに回転運動をしていることがわかる。台風第12号の中心は関東の東海上にまで北上した。12時間前からの移動方向は北北西で、転向(北東に向きを変えること)する兆しは見られない。

図4の気象衛星画像では、前線の雲帯が関東付近で消えかかっている。温帯へ侵入した台風の中心の西側は、下降流が卓越し、前線が不明瞭になる場所である。それに対し、北海道から北では前線の雲帯が拡大し、白さを増している。これは、北海道付近が温帯低気圧の発達場になっていることを示す。実際、図3と図4の地上天気図を比較すると、北海道付近で気圧の低下が著しい。
図3の気象衛星画像で見られた台風第12号に伴う雲域について、その後の変化を図4の気象衛星画像で確認する。図3で台風の領域から逸脱して北海道の太平洋側に接近した雲域(B)は、図4では北海道を通過して前線の雲帯と混然一体となった。また、コンマの頭の雲域(A)が、台風中心の北上に伴い、台風中心の後ろ(南)側を反時計回りに回り込んで、三陸のはるか東海上へ進んだことを見逃すわけにはいかない。
図5は、8月5日21時の地上天気図と気象衛星画像(赤外)である。前線は北海道北部付近を支点としてさらに反時計回りに回転し、北海道付近では北北西~南南東の走向になった。台風第12号は、スピードを速めながら北上し、中心が釧路沖に達した。また、最大風速が気象庁風力階級の10(毎秒25~28メートル)となり、天気図上での表示がSTS(シビア・トロピカル・ストーム)に格上げされた。

図5の気象衛星画像では、前線の雲帯が、北海道からシベリアにかけての雲域と、関東の東から南西諸島にかけての部分とに分かれている。「なべ底型」の台風第12号に伴う雲域で、元はコンマの頭を形成していた雲域(A)は、北上する台風中心の後ろ(南)側から東側を回り、釧路の南東海上を北西進している。この後、雲域(A)は北海道東部に多量の降水をもたらした。
こうして、前線の雲帯と台風の雲域の接合・合体、温帯低気圧の発達場の形成、台風から逸脱した雲域により、北海道の豪雨は8月5日と6日も降り続いた。5日の日降水量は、十勝管内上札内(かみさつない)村で326ミリメートルに達した。これは、現在でも、同地点における日降水量の極値となっている。また、知床半島の斜里(しゃり)町宇登呂(うとろ)では、5日の日降水量が241ミリメートル、6日の日降水量が184ミリメートルに達し、それぞれ同地点における歴代1位と2位の記録となっている。
気象予報の観点から見た防災のポイントの他の記事
おすすめ記事
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/01
-
-
-
-
-
全社員が「リスクオーナー」リーダーに実践教育
エイブルホールディングス(東京都港区、平田竜史代表取締役社長)は、組織的なリスクマネジメント文化を育むために、土台となる組織風土の構築を進める。全役職員をリスクオーナーに位置づけてリスクマネジメントの自覚を高め、多彩な研修で役職に合致したレベルアップを目指す。
2025/03/18
-
ソリューションを提示しても経営には響かない
企業を取り巻くデジタルリスクはますます多様化。サイバー攻撃や内部からの情報漏えいのような従来型リスクが進展の様相を見せる一方で、生成 AI のような最新テクノロジーの登場や、国際政治の再編による世界的なパワーバランスの変動への対応が求められている。2025 年のデジタルリスク管理における重要ポイントはどこか。ガートナージャパンでセキュリティーとプライバシー領域の調査、分析を担当する礒田優一氏に聞いた。
2025/03/17
-
-
-
なぜ下請法の勧告が急増しているのか?公取委が注視する金型の無料保管と下請代金の減額
2024年度は下請法の勧告件数が17件と、直近10年で最多を昨年に続き更新している。急増しているのが金型の保管に関する勧告だ。大手ポンプメーカーの荏原製作所、自動車メーカーのトヨタや日産の子会社などへの勧告が相次いだ。また、家電量販店のビックカメラは支払代金の不当な減額で、出版ではKADOKAWAが買いたたきで勧告を受けた。なぜ、下請法による勧告が増えているのか。独占禁止法と下請法に詳しい日比谷総合法律事務所の多田敏明弁護士に聞いた。
2025/03/14
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方