四半期ごとに発行されるテロ発生状況レポート
Pool Re / Terrorism Frequency Report 1/2018
合同会社 Office SRC/
代表
田代 邦幸
田代 邦幸
自動車メーカー、半導体製造装置メーカー勤務を経て、2005年より複数のコンサルティングファームにて、事業継続マネジメント(BCM)や災害対策などに関するコンサルティングに従事した後、独立して2020年に合同会社Office SRCを設立。引き続き同分野のコンサルティングに従事する傍ら、The Business Continuity Institute(BCI)日本支部事務局としての活動などを通して、BCMの普及啓発にも積極的に取り組んでいる。一般社団法人レジリエンス協会 組織レジリエンス研究会座長。BCI Approved Instructor。JQA 認定 ISO/IEC27001 審査員。著書『困難な時代でも企業を存続させる!! 「事業継続マネジメント」実践ガイド』(セルバ出版)
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英国の再保険会社 Pool Re(注1)は、テロに関連する損害を中心に取り扱う再保険会社であり、テロ関連の様々な報告書を公開しているが、2018 年2月より新たに四半期ごとの最新情報を扱う『Terrorism Frequency Report』の発行を開始した。そこで本稿ではその第1号を紹介する。
今回発行されたものは「1/2018」号となっており、2017 年第4四半期に発生したテロに関する情報を中心にまとめられている。図 1 は本報告書の最終ページに掲載されている図で、2017 年第4四半期に発生したテロの概況がまとめられている。テロ攻撃が行われた地域については中東、アフリカ、南アジアでその大部分を占めるという状況がはっきりわかる。
使用された攻撃手法の中で、IED、PBIED、VBIED といった用語については馴染みのない方も多いであろう。IEDとは improvised explosive devices の略で「即席爆発装置」と訳される(注2)。容易に入手できる材料で作られた爆発物で、テロで最も多く使われる手法となっている。PBIED とは person-borne IED の略で人体装着式即席爆発装置、つまり自爆テロである。VBIED は vehicle-borne IED であり、自動車爆弾を指す。今日のテロではこのような自家製爆弾が最も多く使われている。
標的となった場所については、政府や軍関係の場所が最も多いが、これに次いで混雑した場所におけるテロも非常に多い。海外渡航中はテロなどに巻き込まれるのを避けるために、混雑した場所を避けることが一般的に推奨されているが、このようなデータを見せられるとそのような注意を徹底すべきだということを再認識させられるであろう。
順序は前後するが、本稿のトップに掲載した図は、この報告書の表紙にも使われている図である。横軸は時間(第 4 四半期の3カ月分)を表しており、縦軸は上方向が死者数、下方向が負傷者数となっている。表紙では文字情報が省略されているが、本報告書の 6 ページでは文字情報とともに掲載されており、この中に含まれる次の4つの事件についてはより具体的な解説が掲載されている(番号はそれぞれ図中の番号に対応している)。
(1)10 月14日モガディシュ(ソマリア)
VBIED攻撃
死者512人/負傷者 300人以上
(2)10月31日ニューヨーク(米国)
自動車攻撃
死者8人/負傷者12人
(3) 11月24日アル=ローダ・モスク(エジプト)
IED と銃器による攻撃
死者305人/負傷者120人以上
(4)12月11日ニューヨークのポート・オーソリティ・バス・ターミナル(米国)
IED攻撃
死者0人/負傷者3人
これらのうち(4)では、実行犯はインターネット上に公開されているイスラム過激派のプロパガンダ誌に掲載された説明にしたがってパイプ爆弾を製作し、地下通路で爆発させている。この事件について、死者が発生していないにもかかわらず本報告書で特にとりあげられているのは、遠隔地にいる実行犯が自力で爆発物を製作し、爆発物を探知されずに現場に持ち込んで爆発させたことが、イスラム過激派にとっては成功例と考えられるからである。このようなテロを完璧に防ぐことができない以上、混雑した場所がイスラム過激派のテロ攻撃の標的となり続けると本報告書では警告している。
海外でのテロ活動については、必ずしも日本国内で網羅的に報道されている訳ではなく、特に日本人や日本企業に対する被害や影響が少ない事案や、小規模な事件に関する情報はあまり伝わってこないであろう。しかしながら日本企業や日本国内の場所がテロリストの標的になるのも時間の問題である。したがって本報告書を含めて海外の情報にアクセスして、いまどのような事が起こっているのか知ることも必要なのではないだろうか。
■ 報告書本文の入手先(PDF12ページ/約2.4MB)
https://www.poolre.co.uk/wp-content/uploads/2018/01/Terrorism-Frequency-Report-February-2018.pdf
注1)同社 Web サイト上での説明によると、英国内で発生したテロに関連する損害のための再保険を提供するために 1993 年に設立された。
https://www.poolre.co.uk/who-we-are/about-pool-re/
注2)「自家製爆弾(home made explosives: HME)」と呼ばれることもある。
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