ITの災害復旧を阻害する要因は何か?
Syncsoft / The 2018 State of Resilience
合同会社 Office SRC/
代表
田代 邦幸
田代 邦幸
自動車メーカー、半導体製造装置メーカー勤務を経て、2005年より複数のコンサルティングファームにて、事業継続マネジメント(BCM)や災害対策などに関するコンサルティングに従事した後、独立して2020年に合同会社Office SRCを設立。引き続き同分野のコンサルティングに従事する傍ら、The Business Continuity Institute(BCI)日本支部事務局としての活動などを通して、BCMの普及啓発にも積極的に取り組んでいる。一般社団法人レジリエンス協会 組織レジリエンス研究会座長。BCI Approved Instructor。JQA 認定 ISO/IEC27001 審査員。著書『困難な時代でも企業を存続させる!! 「事業継続マネジメント」実践ガイド』(セルバ出版)
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ITソシューリョンプロバイダーのSyncsoft社とVision Solution社が2017年12月に共同で発表した調査報告書「The 2018 State of Resilience」(以下「本報告書」と略記)を紹介する。これは2017年に世界各国のIT マネージャー(CIOなどを含む)もしくは担当者などを対象として行われた、Webサイトによるアンケート調査の結果をまとめたもので、5632人から回答を受けている。
報告書は「ITのトレンド」、「高可用性および災害復旧」、「ITセキュリティ」、「移行(migration)」、「データ共有」、「クラウド」の6つの部分に分かれているが、本稿ではレジリエンスに最も関連の深いセクションである「高可用性および災害復旧」の部分の中から、筆者が特に注目した箇所をピックアップして紹介する。
図1は、最も重要(critical)なシステムやデータに関する目標復旧時間(RTO)について尋ねた結果であり、概ね45%程度の回答者が1時間以内と回答していることが分かる。しかしながら本報告書では、「これらのRTOは実態と合っているのだろうか?」と疑問を投げかけている。実際にトラブルを経験した企業が復旧までに要した時間と、それらの企業の RTOとを比較すると、該当する回答者のおよそ半分はRTOを実現できていなかったという。本報告書では、その理由が人的資源にあるのではないかと推測している。多くの企業では ITの災害復旧マネジメントに関するスタッフを内部に抱えているが、調査によると、ここ 1~2年でスタッフの人数は増えていないと回答している企業が39%あり、人為的なミスによってデータを失っているケースも多いことから、災害復旧に関する人的資源の確保とそのトレーニングが急務であると指摘している。
また図2は、データを失ってしまうようなトラブルが発生した場合の主な理由について尋ねた結果である。上で指摘された人為的ミスが33%ある他、データバックアップの頻度やタイミング、対象範囲の設定など、データのバックアップに関する運用条件が適切でなかったことが原因で、データが失われたケースが多いことが分かる(注1)。
なお、こういった運用条件を適切に設定し、かつ継続的に運用していくためには、前述の問題意識にあったように人的資源の充実が必要になると考えられる。
本報告書では他にも様々な観点から、ITの災害復旧を阻害する要因などに関して、興味深い調査結果とそれに対する課題の分析や提言などがシンプルにまとめられているので、特にITの災害復旧に関してご感心をお持ちの方にはご一読をお勧めしたい。
■ 報告書本文の入手先(PDF58ページ/約3.7MB)
http://www.visionsolutions.com/Resources/Resource/Details/2018-state-of-resilience-report
注1) 「障害の原因となった事象によってバックアップコピーが失われた」というのは、バックアップコピーを保管したメディアが同じ事業所にあったために、同時に消失してしまったことを指していると思われるので、これも運用条件が適切でなかったという範疇に含まれるであろう。
(了)
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