2014年に大雪に見舞われた都内(shutterstock)

2014年2月、関東甲信地方は2度の大雪に見舞われた。最初は2月8日であり、東京都心で27センチメートル、山梨県甲府市で43センチメートルの積雪を記録した。この大雪により、停電、交通障害などが発生した。しかし、これはまだ「常識」の範囲内の大雪であった。

2度目の大雪は、その翌週の2月14~15日に襲ってきた。東京都心の積雪は8日と同じ27センチメートルにとどまったが、山梨県甲府市では114センチメートルの最深積雪を記録した。これは、それまでの最深積雪の極値(49センチメートル)の約2.3倍であり、まさに「常識外れ」の大雪であった。群馬県前橋市でもそれまでの極値の約2倍(73センチメートル)、埼玉県秩父市では約1.7倍(98センチメートル)の最深積雪を記録した。この大雪により、関東甲信地方(1都8県)で、死者20人、負傷者646人、住家被害589棟のほか、集落の孤立、停電、水道被害、電話不通、交通障害、休校、雪崩、農林水産業への被害などが発生した(一部大雨によるものを含む)。

南岸低気圧

太平洋側の大雪といえば、南岸低気圧と相場が決まっている。南岸低気圧とは、西日本から東日本にかけての太平洋側の沿岸または沖合を、東ないし北東の方向へ進む低気圧のことである。

図1に、2014年2月、関東甲信地方が大雪に見舞われた2事例の地上天気図を示す。どちらも房総半島付近に低気圧があり、ご多分に漏れず南岸低気圧型の天気図が並んだ。「常識外れ」の大雪をもたらした2月15日の低気圧の中心気圧は996ヘクトパスカルで、驚くほどの強さではない。「常識」の範囲の大雪にとどまった2月8日の低気圧の中心気圧は988ヘクトパスカルで、低気圧の強さとしてはこちらの方がむしろ強い。結局、なぜ2月15日の南岸低気圧で「常識外れ」の大雪になったのかは、地上天気図だけでは分からない。

画像を拡大 図1 地上天気図(左:2014年2月8日21時、右:2014年2月15日9時) 気象庁の速報解析による。6時間ごとの中心位置を結んだ経路は筆者が加筆

図1には、低気圧中心の経路をも表示した。二つの事例を比較すると、低気圧中心の経路には相違があることが分かる。すなわち、大雪が「常識」の範囲内であった 2月8日の低気圧は東シナ海から東北東に進んできたのに対し、「常識外れ」の大雪となった2月15日の低気圧は沖縄の南から北東に進んできた。つまり、後者の低気圧の方が、より低緯度から、北上成分の大きい動きをしたと言える。この事実にヒントがありそうだ。