(イメージ:写真AC)

保険関連規制は、(1)付保規制、(2)保険料税、(3)現地での損害調査の可否、(4)保険金送金の可否―の4つに大別できます。今回はこれら保険関連規制について詳しく説明します。

1. 付保規制

付保規制は、GIPの最も基本的な問題です。その国で国外の保険会社による保険引受が可能か? それともその国の免許のある保険会社でなければ駄目か? 言い換えれば、日本企業が契約するGIPにおいて、その国の子会社を日本のマスターポリシーで補償していいか?ということです。

付保規制は国や地域によってさまざま。例えば、同じ中国でも、中国本土と香港ではルールが異なります。

長くイギリスの統治下にあり自由貿易の拠点であった香港には、付保規制となるルールはありませんが、中国には厳格な付保規制があります。日本企業が香港に有する法人や資産に関し、日本の保険会社との間で保険契約を締結することが可能です。香港の保険会社である必要はありません。しかし、日本企業が中国に有する法人や資産に関し、日本の保険会社との間で保険契約を締結することはできません。中国の保険会社と契約する必要があります。

世界各国で商品を製造販売する日本企業がPL保険を契約する場合、補償対象となる被保険者として中国の子会社を追加記入してしまえば、それが中国の法令違反になってしまうのです。

仮に中国で保険事故が発生した場合、中国政府に分からないように、日本の保険会社から日本本社に対して保険金を支払ってしまえばいいではないか、という荒っぽいことが過去実際に行われていたようですが、現在はその危険性がかなり認識されてきました。中国政府の方針によっては、保険会社だけでなく当該日本企業にも不利益がかかるからです。リスクを減らすために加入する保険によって、かえって別のリスクが生じてしまいます。

ヨーロッパの欧州経済領域(EEA : European Economic Area)では特例措置があります。

EEAに加盟している国同士では自由な交易 (FoS:Freedom of Service) が認められるため、保険契約も国をまたいで締結できます。これを活用すれば、EEAのいずれかの国で発行する1本の保険証券(FoS Policy)でEEA内に点在する子会社を全て補償することができるのです。このFoS PolicyをGIPに組み入れることにより、効果的な運用が可能になります。