■労務事情が問題解決を難しくしている

長く操業していればそれだけ問題も蓄積(写真:写真AC)

今回の事例のように、現地で25年も操業している企業の場合には、必ずと言ってよいほどこのような現象(前ページ囲み参照)が多く起きています。しかもこの企業は、中国にグループとして展開されており、同様の事例がグループ企業内でも発覚していることが分かっています。

当社は、法務や労務の専門コンサルタント企業と連携することで、企業の総責任者である総経理に具体的な「正しい対処法」を指南させていただくのですが、嫌疑をかけられている本人たちがそれぞれ企業経営や生産管理の重要なポジションにいるらしく、安易に解雇してしまうと操業に影響するのではないかと及び腰になってしまうことが多々あります。

孤立する経営者。苦悩は尽きない(写真:写真AC)

新任の総経理にとっては、赴任早々このような頭の痛い問題に遭遇し前任の総経理に愚痴の一つでも言いたくなることでしょう。日々頭を悩ませ、相談相手もいないという四面楚歌に陥る方も少なくありません。

しかしこれらの根深い問題を放置しておくことは、今後事業を担っていく80後、90後世代(80年代、90年代以降生まれの世代)の純粋なスタッフたちへ悪影響を及ぼすだけでなく、企業のコンプライアンスの観点からも避けて通れない事象であり、確実に問題の根を取り除くことが求められます。

■諸悪の根源を取り除くことが事業継続に悪影響?

この事例で分かるように、専門家が調査をすることで「誰が、もしくは何が諸悪の根源であるのか」は容易に判断がつくことが多く、どのように解決すべきかを導き出すことも決して難しいことではありません。

しかしながら、長らく同様の問題を引きずってしまっているのには、いくつかの理由があります。主な理由として以下の3点をあげることができるでしょう。

1.総経理、工場長などの現地最終決定者の赴任期間が短すぎるため、前後の事情が把握できず、最終決断に及び腰になる。現地責任者の権限が小さすぎる

2.上記責任者より、当該のローカルスタッフの方が現地法人での勤務期間が長いため、より深く事情や取引企業などとの関係に通じている

3.中国での労務問題、雇用形態、法律などへの適用方法に理解が乏しいため、外部の専門家の意見が必要となる。最終的な決断を下すのには不十分なことが多い

残念なことではありますが、上記の3点は大なり小なり多くの日系企業が抱える課題です。

では、どうやったら問題解決はできるのでしょうか?

次ページに一つの成功事例を紹介します。皆様もぜひ、自分だったらどう解決の糸口を見出すか考えてみてください。