各社の災害復旧サービスをプロの目で比べてみる
The Forrester Wave: Disaster-Recovery-As-AService Providers, Q2 2017
合同会社 Office SRC/
代表
田代 邦幸
田代 邦幸
自動車メーカー、半導体製造装置メーカー勤務を経て、2005年より複数のコンサルティングファームにて、事業継続マネジメント(BCM)や災害対策などに関するコンサルティングに従事した後、独立して2020年に合同会社Office SRCを設立。引き続き同分野のコンサルティングに従事する傍ら、The Business Continuity Institute(BCI)日本支部事務局としての活動などを通して、BCMの普及啓発にも積極的に取り組んでいる。一般社団法人レジリエンス協会 組織レジリエンス研究会座長。BCI Approved Instructor。JQA 認定 ISO/IEC27001 審査員。著書『困難な時代でも企業を存続させる!! 「事業継続マネジメント」実践ガイド』(セルバ出版)
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米国の調査会社 Forrester は、「Forrester Wave」というシリーズで IT 分野を中心に様々な製品やサービスの比較調査を行い、報告書を公表している。今回紹介する『The Forrester Wave: Disaster-Recovery-As-AService Providers, Q2 2017』(以下「本報告書」)では、各社から提供されている、「Disaster Recovery as a Service」(以下「DRaaS」)と呼ばれるサービスについて、10 社間で比較した結果を公表している。
ここで「DRaaS」という用語に馴染みのない方も多いかもしれないが、これは IT システムの障害や災害に備えるためのデータやシステムのバックアップ環境を自前で用意せずに、プロバイダーが用意したクラウド上のバックアップ環境にデータを常時同期させておいて、事故や災害などが発生したときにはそれらを稼働させるというサービスである(注 1)。比較的低コストで導入・利用できることから、近年普及が進んでいる形態である。
なお Forrester 社では DRaaS を次のように定義している(和訳は筆者)。
「A pay-per-use managed service that uses cloud-based infrastructure and continuous replication technologies and orchestrates the transition of applications to recovery infrastructure in case of an outage to deliver a resilient business service.(レジリエントなビジネスサービスを運用するために、クラウドベースのインフラと継続的レプリケーション(複製)技術を使用し、機能停止に陥った時、アプリケーションを復旧用のインフラに移行できるように調整された、使用した分だけ支払う形態の、管理されたサービス)」
本報告書では、まず Amazon Web Services や Google Cloud、Microsoft Azure などといった大手が提供するインフラに依存せずに、自前でクラウドベースのインフラを持っている主要な DRaaS プロバイダを 10 社選び、各社に対して Forrester 社が独自に開発した評価項目に基づいて評価を行った。
図 1 はその評価結果である。図の左側に並んでいるのが評価項目であり、これらに対する各社の評価結果が 1~5 の 5 段階評価で記載されている。
DRaaS は災害や機器の故障などによる障害から早期復旧を図るために利用するサービスであるから、評価項目の中では「復旧目標の実現能力」にまず目が行くと思われるが、この項目に関する評価結果は各社とも「3.0」で全て同じである。つまり、目標時間以内に復旧させること自体は DRaaS の中では既に「あたりまえ」であり、この点については本報告書においても、復旧目標の短期化では「もはや他社のサービスとの間での差別化要因は出来ない」と指摘されている。
これに対して「技術サポート」、「管理インターフェイス」、「コンサルティングサービス」などの項目に関しては各社間で評価が分かれており、各社それぞれに自社のサービスに付加価値を加えていることが分かる。
なお本報告書では、この後 4 ページ以上に渡って、各社のサービスの特徴や、評価において着目された事項などが解説されている。このような報告書は、これから新規に DRaaS を導入したり、もしくは既存のサービスからの移行を検討する際に役立つであろう。
もちろん最終的に導入を決定するまでには、自社にとっての要件を踏まえて、より詳細な情報収集を個別に行う必要があるのは言うまでもないが、このように現在提供されているサービスを概観でき、しかも専門家の目で評価されたサービスがあれば、導入を検討するプロセスが格段に楽になる。日本でもこのような比較検討結果が多数公開されるようになると、利用者にとって有用なのではないだろうか。
■ 報告書の入手先(PDF 16 ページ/約 0.4 MB)
http://www.planb.co.uk/wp-content/uploads/2017/04/Reprint-Report.pdf
注 1) ソフトウェアを(購入するのではなく)インターネット経由で利用し、利用した分だけ料金を支払うという提供形態を SaaS(Software as a Service)と呼ぶのが IT 業界では一般的になっており、DRaaS もこのような考え方に基づいている。
(了)
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