2.IBウイルスの増殖する臓器からのウイルス回収

IBウイルス鹿児島―34株を接種することによって、2週齢時接種ヒナは下痢便を長期間排泄するという実験成績が得られましたので、この点をさらに確かめるために、2週齢ヒナに同じウイルス株を接種した後、定期的に殺処分してウイルスが増殖すると考えられる複数の臓器からのウイルス回収を20週間にわたり行いました。なお、対照として6週齢ヒナも用いました。

得られた結果を[表2]に示しました。6週齢時接種ヒナからのウイルス回収は呼吸器と腎臓からウイルス接種後4週目まで認められるのみでしたが、2週齢接種ヒナからはより多くの臓器からウイルスが回収され、18週後にも結腸から回収されました。

写真を拡大 [表2]IBV鹿児島-34株を接種したヒナの各臓器からのウイルス回収

以上の結果から、2週齢時ウイルス接種ヒナではIBウイルスの持続感染が起きることが確認され、さらにIBウイルスが長期間増殖する臓器は下部腸管であることも分かりました。

3.IBウイルスを接種したヒナでの抗体産生

前ページの[表1]に示した実験を行った際、IBウイルス鹿児島―34株を接種したヒナから2週間に1回採血も行なっていました。そしてウイルス中和試験(前回記事参照)により、血清中で産生された抗体および抗体価(※)の動態を調べました。

その結果を[図1]に示しました。いずれの週齢でウイルスを接種したヒナにおいても、ウイルス接種後4週目から抗体の産生が認められました。しかし抗体価は、2週齢時接種ヒナでは低いまま経過し、ウイルス接種後14週目には消失していました。一方4および6週齢時接種ヒナでは、実験が終了した20週目まで抗体は検出され続けました。

写真を拡大 [図1]接種週齢の異なるSPFヒナにおける鹿児島-34株に対する中和抗体価

興味深いことに、2週齢時に接種したヒナでは、糞からウイルスは20週間回収され続けていたにもかかわらず、血中抗体は消失したのです。なぜこのような理解し難い現象が起きたのか不思議に思いました。そこでこの現象を解明する目的で、さらに次ページの実験を行いました。

(※)抗体の量や強さのこと