2017年11月の移転以前の在ペルー日本国大使館

2019年5月にリスク対策.comが開催した危機管理カンファレンスの基調講演テーマは「五輪開催に向けたリスクマネジメント」で、中でも「テロ対策」が大きく取り上げられていました。企業のグローバル化が進む中、テロリスクは確実に高まっていると感じます。そこで今回は、海外で社員がテロ事件に巻き込まれたケースについて、危機管理広報の在り方を考えてみることにしました。日本人が巻き込まれた歴史的に有名な事件としては、在ペルー日本大使公邸占拠事件、アルジェリア人質事件などがあります。ペルーでは複数の企業人が巻き込まれ、本社の広報対応がバラバラでしたが、アルジェリア事件での日揮株式会社の対応は適切でした。何が違ったのか振り返ってみましょう。

発言しない場合でも、その方針を公表する

アルジェリア人質事件を振り返ってみましょう。2013年1月16日、アルカイダ系の武装勢力がアルジェリア東部に位置する天然ガス精製プラントを襲撃しました。警備していたアルジェリア軍の兵士が応戦したものの、日本人10名を含む外国人41名とアルジェリア人150名が人質として拘束されました。この時拘束された日本人は全員が日揮の幹部を含む社員、協力会社社員です。
日揮本社の対応は迅速でした。翌17日には、「アルジェリアにおける建設現場駐在社員拘束の報道について」と題するニュースリリースを掲載し、「拘束された場所および人数などの詳細については、拘束された現場駐在員の安全を確保するため発言を差し控えさせていただきます」と明記しました。
 途中から方針が変更されたのか、IR担当者がぶら下がり取材に応じた様子が報道されました。おそらくメディアからの猛烈な取材攻勢にスタッフが対応しきれなくなり、担当者が顔出しをしてスタッフの負担を軽減する方針に切り替えたのでしょう。このように対応に限界がある場合に、ぶら下がりで対応するという臨機応変さもありだろうと思います。
そして、社長による公式記者会見は、日本人社員の遺体を引き取った後に行われました。これも賢明は判断でした。