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2025年4月現在、イスラエルは停戦合意に署名したにもかかわらず、パレスチナのガザ地区やレバノンに対する軍事攻勢を再び強めている。この動きは国際社会から厳しい批判を受けているが、ネタニヤフ首相が率いる政府は強硬な姿勢に徹している。ネタニヤフ政権にとって、アメリカの政治情勢は大きな影響力を持つ外部要因であり、特にバイデン政権(2021~2025年)とトランプ政権(2017~2021年および2025年以降)の違いがその行動を左右している。ここでは、両政権下での政治的背景の違いを検討し、親イスラエルを掲げるトランプ政権下でネタニヤフ政権の軍事行動がさらに激化する危険性について考察する。

まず、バイデン政権時代におけるネタニヤフ政権の状況を振り返ってみよう。バイデン政権は、アメリカの伝統的なイスラエル支援を継承しつつも、人権や国際法を重視する立場を強調していた。2023年10月のハマスによる大規模攻撃後、イスラエルがガザで大規模な軍事作戦を展開した際、当初は自衛権を支持したものの、民間人の犠牲が増えるにつれて批判的な態度を強めた。例えば、2024年5月には当時の国家安全保障補佐官ジェイク・サリヴァンが、ネタニヤフ首相に対し無差別攻撃への懸念を伝えた。このような圧力は、停戦交渉や人道支援拡大を求める国際的な動きと連動し、ネタニヤフ政権に一定のブレーキをかける役割を果たしていた。しかし、バイデン政権の影響力には限界があり、ネタニヤフ首相は国内の極右勢力の支持を優先し、軍事作戦を続行した。バイデン政権の外交的働きかけは、決定的な歯止めにはならなかったと言える。

これに対し、トランプ政権下では状況が一変する。トランプ大統領は初代政権(2017~2021年)でイスラエルへの全面的な支持を表明し、エルサレムを首都と認め大使館を移転するなど、親イスラエル政策を推し進めた。さらに、2020年の「アブラハム合意」でイスラエルとアラブ諸国の関係改善を支援し、ネタニヤフ首相の国際的地位を高めた。再選後の2025年以降もこの方針は変わらず、トランプはネタニヤフを強力に後押ししている。この環境は、ネタニヤフ政権に軍事行動の自由を与える要因となっている。