これらの対応を速やかにするには、サイバー攻撃がもたらす被害をあらかじめ検証して対応を考え訓練・演習を積んでおくとともに、サイバーセキュリティの状態を常時監視し、サイバー攻撃を検知した際には、経営や企業ブランドに及ぼす影響などを考慮しながら、システムの継続・復旧の判断ができる体制が求められる。

日常的にシステムを監視し、大規模なセキュリティに関わる事件・事故が起きた際に早急な原因究明や影響範囲の特定を行うのがCSIRT(Computer Security Incident Response Team、インシデント対応専門チーム)だ。IT部門と経営との間に立って事業に及ぼす影響や可能な対策を助言する役割も持つ。

サイバー攻撃の場合、専門性が高い技術部隊と、経営、各事業部との連携がより重要になる。自然災害やサイバー攻撃など幅広いリスクを対象に企業の演習を支援するニュートン・コンサルティングのCISO兼プリンシパルコンサルタントの内海良氏は、「サイバーセキュリティは今や重要な経営課題の1つ。CSIRTの役割を検証し、対応力を高める演習が必要」と指摘する。例えば、CSIRTから経営層にエスカレーションするかしないかの判断が明確に行えるか、経営視点に立った報告ができるか、など。経営層は、CSIRTからの報告を受け、適切に判断・意思決定ができるか、あるいは各部署で社内外からの情報収集・共有が迅速に行えるかも検証すべき項目とする。

一方、IT-BCPで見落としてはいけない点について富士通エフサスの小友氏は、自然災害でもサイバー攻撃でもいずれの脅威についても、最も重要なことは、①自社の状況を取引先や顧客に正しく発信できるようメールサーバやホームページのウェブサーバについては最低限、代替できる方法を考えておくこと、②支払いのシステムは社会的責任が問われることからシステムが使えなくなった際の代替方法を考えておくこと、③自社の主要事業において重要業務を支えている情報システムは明確にしておくこと、の3点だと説く。さらに、事故や災害、サイバー攻撃事案が起きた際、誰が何をどのような手順で行うのかといったマニュアルを整備していない企業が多いことから、初動体制の構築を急ぐべきだとする。