気候変動の間接的な影響は、主要事業に関わる(Adobe Stock)

2030年最悪シナリオで今回は銀行と不動産業に注目する。直接的な人員、店舗、設備への影響だけではなく、間接的な被害も複数あがる。

銀行業の気候リスクと影響

銀行は店舗数を減らす傾向にあり、基本的なルーチン業務はATMやネットバンキングで自動化されている。台風や豪雨災害により、これらのネットワーク回線が寸断し、ATMや店舗は浸水被害を受ける頻度が増大する。

自然災害の被災者に対して手作業で預金の引き出し等に応じなくてはならないが、一時的とは言え、数少ない銀行窓口に預金者が殺到して業務量が劇的に増えることだろう。夏場の40℃超えの異常高温は銀行員の営業活動に支障を来す。顧客との対面での信頼関係が築きにくくなり、昔のようなアプローチでの活動機会は減少する。

一方、気候変動災害は、銀行自体だけでなくその融資先企業にも甚大な被害をもたらす。企業の生産活動や販売活動が阻害され、事業継続が困難になるケースも想定される。融資先の被災や業績悪化は不良債権の増加につながり、銀行の財務を不安定にする。特に、農業や漁業、河川沿いに立地する製造業など、気候変動の影響を受けやすい企業への融資は災害リスクが高まる。

銀行は融資先の災害に対するぜい弱性や環境配慮への評価を厳格化しなくてはならない。災害レジリエンスの低い顧客や環境負荷の高い企業への融資は縮小される一方、環境に配慮した事業を行う企業への融資は増加するだろう。