2001年からさまざまな不祥事報道をクリッピングし、危機管理広報の失敗事例を集めています。似たような失敗が繰り返されるので、パターンをまとめていますが、何でも3つにまとめると覚えやすいので、ここでも3つにしました。「タイミング」「公表方法」「表現」です。今回はこの失敗パターンについて深堀してみましょう。

タイミング:深刻に受け止めること

日本における危機管理広報での典型的な失敗の先駆けとなったのは、2000年に起きた大手食品メーカーの集団食中毒事件です。子どもを中心とする1万人以上に被害が出ましたが、最初の訴えがあってから、自主回収まで4日間かかったことが被害を拡大させました。しかも社長が知ったのは自主回収を始めた後でした。初めの通報で「苦情はままある」「10万、20万のうちの7本ならクレームの範囲」と事態を楽観視したために対応が遅れたのです。これは典型的な失敗ですが、教訓とされず、このような失敗は繰り返されています。

例えば舛添要一・東京都知事は2016年4月に記者会見で公費の使い方について質問を受けたにも関わらず、事を軽視する発言・態度を繰り返し、向き合う姿勢を取らなかったために、辞任に追い込まれました。2018年の日本大学アメフト事件もタイミングを失敗しています。けがをさせてしまった相手のチームが記者会見をしているのに、調査や説明責任を果たさなかったために、選手が先に記者会見をすることになり、大学のイメージを悪化させました。

なぜ、このようにタイミングが遅れてしまうのでしょうか。「よくあることだ」「前にもあったし」「大したことはない」「大騒ぎするとかえって目立つ」「時間が経てばいずれ収まるだろう」といった考えが頭をよぎるからです。ここから学ぶことは「小さなことでも大騒ぎをする」。小さいうちに深刻に捉えて猛省する姿勢であれば、タイミングを逸することはなくなるでしょう。