失敗の3つのパターン
第5回目 「タイミング」「公表方法」「表現」
日本リスクマネジャ-&コンサルタント協会副理事長/社会構想大学院大学コミュニケーションデザイン研究科教授/
広報コンサルタント
石川 慶子
石川 慶子
東京都生まれ。東京女子大学卒。参議院事務局勤務後、1987年より映像制作プロダクションにて、劇場映画やテレビ番組の制作に携わる。1995年から広報PR会社。2003年有限会社シンを設立。危機管理に強い広報プロフェッショナルとして活動開始。企業・官公庁・非営利団体に対し、平時・緊急時の戦略的広報の立案やメディアトレーニング、危機管理マニュアル作成、広報人材育成、外見リスクマネジメント等のコンサルティングを提供。講演活動やマスメディアでのコメント多数。国交省整備局幹部研修、警察監察官研修10年以上実施。広報リスクマネジメント研究会主宰。2024年より社会構想大学院大学コミュニケーションデザイン研究科教授。
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2001年からさまざまな不祥事報道をクリッピングし、危機管理広報の失敗事例を集めています。似たような失敗が繰り返されるので、パターンをまとめていますが、何でも3つにまとめると覚えやすいので、ここでも3つにしました。「タイミング」「公表方法」「表現」です。今回はこの失敗パターンについて深堀してみましょう。
タイミング:深刻に受け止めること
日本における危機管理広報での典型的な失敗の先駆けとなったのは、2000年に起きた大手食品メーカーの集団食中毒事件です。子どもを中心とする1万人以上に被害が出ましたが、最初の訴えがあってから、自主回収まで4日間かかったことが被害を拡大させました。しかも社長が知ったのは自主回収を始めた後でした。初めの通報で「苦情はままある」「10万、20万のうちの7本ならクレームの範囲」と事態を楽観視したために対応が遅れたのです。これは典型的な失敗ですが、教訓とされず、このような失敗は繰り返されています。
例えば舛添要一・東京都知事は2016年4月に記者会見で公費の使い方について質問を受けたにも関わらず、事を軽視する発言・態度を繰り返し、向き合う姿勢を取らなかったために、辞任に追い込まれました。2018年の日本大学アメフト事件もタイミングを失敗しています。けがをさせてしまった相手のチームが記者会見をしているのに、調査や説明責任を果たさなかったために、選手が先に記者会見をすることになり、大学のイメージを悪化させました。
なぜ、このようにタイミングが遅れてしまうのでしょうか。「よくあることだ」「前にもあったし」「大したことはない」「大騒ぎするとかえって目立つ」「時間が経てばいずれ収まるだろう」といった考えが頭をよぎるからです。ここから学ぶことは「小さなことでも大騒ぎをする」。小さいうちに深刻に捉えて猛省する姿勢であれば、タイミングを逸することはなくなるでしょう。
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