結核の撲滅のために

国内
結核菌感染→発病→結核菌感染→という結核菌の連鎖的な拡散が世界中で起きています。これを断ち切ることが結核撲滅の基礎です。そのために次のような活動が国内で行われています。
1. 新生児へのBCG接種を励行し、結核菌に対する抵抗性を持たせる。
2.結核菌感染者(子ども、若年層)に、抗結核菌薬剤を服用させ発病を防ぐ。
3.早期発見のための健康診断を行って、早期に治療する。
4.診断された発病者を有効な化学療法で治療して感染源を断ち切る。できるだけ早く健康な生活に復帰させる。
5.その他、結核罹患者や家族への様々な指導、結核罹患者の登録制度の確立、結核流行監視(サ-ベイランス)、各種結核対策従事者の訓練なども結核対策として実施する。


国外
開発途上国を中心に結核が大発生しており、各国はその対策に追われています。 現在の治療は、短期化学療法が本流ですが、抗結核薬の服用を中断する事例があまりに多く壁に直面しています。薬剤の服用中断は、結核が完治しないどころか薬剤耐性菌を生み出す原因となり、治療に大きな障害を引き起こしています。薬剤耐性菌は世界中に分布しており、結核患者数が減少しない最も大きな要因となっています(図)。

WHOの結核対策本部では「薬を患者には手渡さないで、毎日外来に通ってもらい、職員の目の前で飲ませる」方式を打ち出し、これをDOTS(直接監視下短期化学療法:Directly Observed Treatment, Short course)として、結核の標準的な治療方式としました。 これが次第に普及して大きな成果を挙げています。


結核多発国を含む国外からの人たちを迎えるに当たって

前回触れましたが、今後、結核多発国から青年層を中心とした多くの人たちが日本に来て、国内各地の企業などに就労して長期間生活するケースが非常に多くなることが予想されます。これらの人たちと国内のいろいろな場所で接触する機会が増えることも予想され、来日する人、迎えて共に業務に携わる人などあらゆる場所で関係する全ての人たちが、結核による被害を受けることなく健康な状態で共に活動することが何より重要です。

そのためには、国外から来る人たちが健康であることがまず重要です。さらに、日本国内での就労期間中、公私において無用なストレスが生じないような多方面での細かい配慮、定期的な健康診断などが不可欠です。発病した場合の診療体制も整えておくことが肝要です。
また、国外から来た人たちと直接接触する国内側の人たちの健康維持も大変重要です。結核防疫の面から、ツベルクリン反応などの定期的な実施、陰性の場合のBCG接種は必須になるでしょう。

筆者が子どもであった昭和20〜30年代は、当時の大人の多くの割合が結核菌に感染していたため(多くは不顕性感染でしたが)、一度BCG接種を受けておけば結核菌に対する終生免疫が成立すると言われていました。その年代の人たちの多くは他界し、結核菌感染経験のない大人たちが大部分である世代に移行しています。従って、日本国内で生活する限り、通常では、結核菌に感染する機会はかなり少なくなっていると考えられます。

現在、BCGを一度接種すれば終生免疫が成立する時代ではなくなっています。BCG接種後の有効期間は10〜15年であることを考慮するならば、成人においても、ツベルクリン反応などの定期的な実施、陰性の場合のBCG接種が必須になっているのではないでしょうか。

次回は、結核菌以外の抗酸菌症について解説する予定です。

(了)