セキュリティ文化の醸成と意識の高度化 ~2020年に向けて私たちにできること~
緊急事態に遭遇、その時あなたの判断は
自分で調べ経験と知識総動員して決定を
Toki's SECURITY Lab./
平川 登紀
平川 登紀
旧姓・宇田川。映画『羊たちの沈黙』のFBI訓練生クラリスに憧れ渡米。ワシントン州立大学大学院で犯罪法学(Criminal Justice)の修士号を取得。帰国後、航空セキュリティ関連の財団法人で、空港保安検査員の研修や保安検査状況の監査を担当し、航空セキュリティに興味を持つ。2007年、東京大学大学院博士課程へ進学し、本格的に航空セキュリティマネジメントの研究をスタート(2011年単位取得満期退学)。2021年に佐賀県唐津市へ移住。現在、フィジカルセキュリティストラテジストおよび航空セキュリティ研究者として活動中。
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犯罪者やテロリストに事件を起こさせない環境を作るためには、また私たち自身がテロや犯罪や事故に巻き込まれないためには、そして万一の事態が起きたとき被害を最小限に抑えるためには、私たち一人ひとりのセキュリティ意識を高めることが重要です。しかし、実際に自分が主役として緊急事態に遭遇すると…。今月は私自身の経験をお話します。
初めてのインド出張
以前、私はインドの大規模建設プロジェクトにセキュリティ担当として参加していました。初めてのインドでしたが、適応能力だけはあるので、あっという間にインドでの生活に慣れていきました。
ある日、プロジェクトの建設エリアとなっている場所のセキュリティ状況を把握するするため、インド人のドライバーとともに現地へ向かいました。ドライバーは、このエリアの治安は良く、人々にとっても快適な場所であると私に伝えました。私を送った後、ドライバーは別のプロジェクトメンバーを迎えに行くことになっていました。車を降りた場所に1時間後に集合することにして、私は一人で車を降りました。車は行ってしまい、少し心細かったのですが、確かにこのエリアの治安は悪くなさそうでした。
遠くに一匹の犬の姿を見つけましたが、問題はないと判断し歩き始めました。ところが、ドライバーが去り、私がカメラを片手に調査を始めると、その犬がこちらに向かって走ってきました。道路上にインドの人々はいましたが、直感でわかりました。ターゲットは私…。
犬は追いかけ、私は逃げる。
インドは世界で最も狂犬病の犠牲者が多い国です。犠牲者は年間2万人ともいわれています。「逃げなければ!」と、私は走り出しました。後ろを振り向く余裕も勇気もなく、ただ走りました。このときのダッシュは自分史上最速だったと思います。それまでも様々な国で仕事をしてきましたが、生きて帰国できないかもしれないと考えたのはこの時が初めてでした。今までがラッキーだったのかもしれません。
そのとき、後からバイクの音が聞こえてきました。猛スピードで私の隣に並び「乗りなさい」と私に合図をしました。バイクに乗っていたのは見ず知らずのインド人のおじさんです。しかし、この状況ではこのおじさんを信じる以外に犬から逃げる方法はありません。バイクの後ろに乗った途端におじさんはスピードを上げ、犬に追いつかれる前に逃げることができました。おじさんにお礼を言い、すぐにドライバーへ電話をかけ迎えに来てもらいました。
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