2016/05/24
講演録
TIEMS日本支部第11回パブリックカンファレンス

TIEMS(国際危機管理学会)日本支部は2016年1月29日、「あなたのまちの危険物質を考える(3)~CBRNから身を守るための基礎知識とリスクコミュニケーション~」をテーマに、パブリックカンファレンスを都内で開催した。
講演を行ったのは、防衛医科大学校分子生体制御学講座教授の四ノ宮成祥氏、横浜国立大学大学院環境情報研究院客員准教授で、独立行政法人製品評価技術基盤機構化学物質管理センター調査官の竹田宜人氏、そして一般社団法人日本災害医療ロジスティック協会理事、株式会社ノルメカエイシア代表取締役兼CEOの千田良氏。
四ノ宮氏は、「身近に存在する生物兵器リスク」と題し、日本におけるCBRNE事件を振り返るとともに、ソ連やイラク、南アフリカなど世界中の生物兵器開発の歴史をひも解きながら、生物兵器の新たな脅威について解説した。竹田氏は「化学工場事故等に備えた地域コミュニケーション」と題し、リスクコミュニケーションとはどのようなものか、企業は平時から地域住民とどのようなコミュニケーションをとらなければいけないのかについて考察した。千田氏は、「CBRNE災害に備えて」と題し、災害医療の重要性と民間でも取り組むことができるCBRNE対策の必要性について訴えた。
続いて、四ノ宮氏、竹田氏、千田氏に加え、理事でインターリスク総研主任研究員の田代邦幸氏をパネリストに迎え、パネルディスカッションを行った。コーディネーターは新潟大学危機管理研究室教授の田村圭子氏。

会場から上がった「デュアルユースジレンマとはどのようなものか」という問いに対して四ノ宮氏は、「民間にも活用できるが、軍事にも活用できる技術のこと。我々の世界は基本的に生物兵器を開発してはいけない、保持してはいけないことになっているが、そもそも生物兵器とはどのようなものかを定義しなければいけないところから始まっている。幸い、ほとんどの技術は我々の生活、医療に多大な還元ができるものなので、学術の進歩を阻害するという議論にはなっていないが、これが軍事に転用された時にどうなるかということは常に世界中で監視していなかければいけない」と、科学技術の発達に関して警鐘を鳴らした。
また、「多くのステークホルダーと対話をした方がよいというが、その場合、近隣住民まで指すのか。どのような対話をしていけばいいのか」という問いに、竹田氏は「研究開発拠点の周りの住民とも話し合いをしている場合が多い。万が一、有害物質が漏れた場合に実際に被害があるのは住民の方々だ。また、研究開発をしている本人が議論に加わっている場合もある。研究が、どういう目的で研究開発をしていて、将来どのような有用なことに還元できるのか主張している。リスクを解析し、万が一事故が起きた場合にどのくらい被害が及ぶのか、シナリオベースで解析している人もいる。一概には言えないが、いろんな方面から議論した方がよい。大切なのは安全性をいかに確保しながら、一方で化学の進歩のメリットを我々がどのように享受しているかということを理解してもらうことだ」とした。
「災害医療ロジスティックスというのはどのようなものか?」という質問に対し、千田氏は「組織は東日本大震災の前年に結成し、まさに活動をはじめようとしていたところだった。災害が起きたときに、医療行為は医者にしかできない。しかしそのサポートは一般の人にでもできる。看護師や薬剤師などもふくめ、医療関係従事者に医療行為に専念してもらうため、そのほかの情報収集や発信、食事の問題、安全確保や宿泊準備まで、医療行為以外のすべてをサポートすることを目的としている」と、その重要性について話した。
講演録の他の記事
おすすめ記事
-
トヨタが変えた避難所の物資物流ラストワンマイルはこうして解消した!
能登半島地震では、発災直後から国のプッシュ型による物資支援が開始された。しかし、物資が届いても、その仕分け作業や避難所への発送作業で混乱が生じ、被災者に物資が届くまで時間を要した自治体もある。いわゆる「ラストワンマイル問題」である。こうした中、最大震度7を記録した志賀町では、トヨタ自動車の支援により、避難所への物資支援体制が一気に改善された。トヨタ自動車から現場に投入された人材はわずか5人。日頃から工場などで行っている生産活動の効率化の仕組みを取り入れたことで、物資で溢れかえっていた配送拠点が一変した。
2025/02/22
-
-
現場対応を起点に従業員の自主性促すBCP
神戸から京都まで、2府1県で主要都市を結ぶ路線バスを運行する阪急バス。阪神・淡路大震災では、兵庫県芦屋市にある芦屋浜営業所で液状化が発生し、建物や車両も被害を受けた。路面状況が悪化している中、迂回しながら神戸市と西宮市を結ぶ路線を6日後の23日から再開。鉄道網が寸断し、地上輸送を担える交通機関はバスだけだった。それから30年を経て、運転手が自立した対応ができるように努めている。
2025/02/20
-
能登半島地震の対応を振り返る~機能したことは何か、課題はどこにあったのか?~
地震で崩落した山の斜面(2024年1月 穴水町)能登半島地震の発生から1年、被災した自治体では、一連の災害対応の検証作業が始まっている。今回、石川県で災害対応の中核を担った飯田重則危機管理監に、改めて発災当初の判断や組織運営の実態を振り返ってもらった。
2025/02/20
-
-
2度の大震災を乗り越えて生まれた防災文化
「ダンロップ」ブランドでタイヤ製造を手がける住友ゴム工業の本社と神戸工場は、兵庫県南部地震で経験のない揺れに襲われた。勤務中だった150人の従業員は全員無事に避難できたが、神戸工場が閉鎖に追い込まれる壊滅的な被害を受けた。30年の節目にあたる今年1月23日、同社は5年ぶりに阪神・淡路大震災の関連社内イベントを開催。次世代に経験と教訓を伝えた。
2025/02/19
-
阪神・淡路大震災30年「いま」に寄り添う <西宮市>
西宮震災記念碑公園では、犠牲者追悼之碑を前に手を合わせる人たちが続いていた。ときおり吹き付ける風と小雨の合間に青空が顔をのぞかせる寒空であっても、名前の刻まれた銘板を訪ねる人は、途切れることはなかった。
2025/02/19
-
阪神・淡路大震災30年語り継ぐ あの日
阪神・淡路大震災で、神戸市に次ぐ甚大な被害が発生した西宮市。1146人が亡くなり、6386人が負傷。6万棟以上の家屋が倒壊した。現在、兵庫県消防設備保守協会で事務局次長を務める長畑武司氏は、西宮市消防局に務め北夙川消防分署で小隊長として消火活動や救助活動に奔走したひとり。当時の経験と自衛消防組織に求めるものを聞いた。
2025/02/19
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/02/18
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方