第37代東部方面総監、元陸将
アジアパシフィックイニシアティブ財団上席研究員
ハーバード大学上席研究員
磯部晃一氏

(写真イメージ:Shutterstock)

災害や事故、あるいは今回の感染症などへの対応を改善していくためには、検証という作業が不可欠になります。自分たちの対応を振り返り、同じ過ちを繰り返さないようにするためのものです。米陸軍や自衛隊では、日常的な訓練においても、「検証」が重視されているといいます。第37代東部方面総監・元陸将で、現在アジアパシフィックイニシアティブ財団上席研究員の磯部晃一氏に軍隊における検証の方法を伺いました。

(以下、危機管理産業展2020「事例から学ぶ検証の重要性」での講演内容から抜粋して紹介)

米陸軍が実施しているAAR

アメリカ陸軍には、「リーダーのためのAARガイド」(The Leader’s Guide to After Action Reviews)という教範があります。AARというのは、アメリカの陸軍で取り入れられた検証のプロセスです。これによると、AARは「兵士、部隊自らが、訓練中に実際に行動したことを冷静に分析し、練度を向上させるために、訓練実施直後に行う討議」とあります。反省会と言い換えてもいいかもしれません。

日本では「反省会をやるぞ」と言うと、大抵は飲み会になってしまうのですが、米軍では非常に真剣にやっています。米軍との共同訓練を経て、陸上自衛隊もAARというものに、非常に力を入れるようになってきています。具体的には、小さな部隊だと、指揮官が隊員を集めて反省会をするという形なのですが、正式なAARでは訓練をする前に、ファシリテーターやオブザーバーコントローラーが指名されます。彼らは、あらかじめ訓練の目標、部隊の任務、指揮官の意図などをしっかり掌握して、この訓練で何を実現したいのか、何を目指しているのか、どこまで練度を上げたいのかということを把握した上で、訓練全体を通じて部隊に密着しながら行動を記録し、それに基づいて討議を行います。