患者90名を救出
病院の事業継続を支えたもの

常総市役所から北へ1㎞ほど離れた場所にある医療法人寛正会水海道さくら病院(常総市水海道)は、1m50㎝もの浸水被害を被り危機的な状況に陥りながらも、DMATや消防の救援を得て医療体制を守りぬいた。 

病院周辺では、10日夕方の6時ぐらいから水かさが増え出し、あっという間に1階部分が浸水し、床上まで水位が上がった。外来はすでに終えていたが、院内には90人程の入院患者と40人程の職員がいた。普段はこれほど多くの職員が残っていることはないが、地下に食堂があったこともあり、水の流入を防ぐため、多くの職員が土のう積みを行い院内に残っていた。結局、地下室は天井まで完全に水没した。 

1階に水が入ると、院内では、職員が万が一のことを考え、2階の患者をすべて3階に避難させた。市内全域が停電になったが、幸いにも同社の非常用発電機は2階に設置されていたため問題なく作動した。その日は全職員と患者が3階で夜を明かした。

翌日にはDMATのドクターが救援に入り、患者の診察をしながら、透析患者や重症になる恐れのある患者を優先的にヘリコプターやボートで別の医療機関に搬送していった。この間、食料や医薬品、非常用発電機の追加燃料などはすべてボートで届けられた。最終的に12日の土曜日には全職員と患者の搬送を終えた。

復旧したさくら病院

「県、自衛隊、市、消防、DMAT、警察など複数の関係者がいる中で、市役所が水没しているという情報も入り、誰に連絡してよいのか困難な状況ではありましたが、病院の中にいる事務長と、我々外部にいるスタッフが連絡をとりあいながら、どのタイミングで何が必要か的確に県の対策本部に伝えることができたことは良かったと思います」と経営企画室の草野康弘氏は語る。草野氏自身も当日は病院の外にいながら対応の後方支援にあたった。 

浸水の影響は大きく、復旧の目途も立たず、当面、院内に患者を受け入れられる状況ではなかったが、それでも、駐車場にテントを張り、翌週から外来を再開した。1週間程度テントの外来を続けた後は、2階に臨時の外来スペースを作って診療を続けた。10月5日には入院の再開にこぎつけた。 

1階には、放射線、レントゲン、CTなどの医療設備があるが、これらは水没。廣井信院長はブログで「被害額は8億2000万円に見込まれる」と書いている。火災保険の水災特約に加入していたことで一定額はカバーできる見込みだが、資金繰りは厳しく、同院ではインターネット上で寄付金を呼びかけるクラウドファンディングによって300万円を調達した。「保険に入ってなかったら、ここまですぐに復旧させる決断はできなかったと思います。寄付金をいただけたことも、とても助かりました」(草野氏)。全国からの支援が同院の事業を支えた。