スマートシステムは我々をバカにする

停電したニューヨーク市
(写真:Shutterstock)

災害専門家が心配するのは停電そのものより、その後のことである。広域の停電に際して何万戸もの世帯の状況を改善するために政府ができることはほとんどない。2006年のクイーンズでの停電のときには、市の職員がお年寄りなどの家を1軒1軒たずねて氷とボトルウォーターを手渡して回った。我々は電気が復旧するのを今か今かと気をもみながら待つしかなかった。
問題は停電のとき何をすべきかを大半の人が知らないことである。アストリアやロングアイランド市の人でバックアップの計画を持つ人、あるいはインターネットのない72時間が何を意味するかを知る人はほとんどいなかった。食事のために狩猟のできる人はさらに少ない。シームレスのアプリなしに食糧を自給できる人は、ウイリアムズバーグの狩猟用の鳥と同じくらい珍しい。

 

使わなければ失う

今日、スマートシステムとロボットのような”人工的なエージェント“が人間の仕事の代替をする割合は高まる一方である。例えば病気の診断、自動運転、技術レポートの作成などがある。同時に我々は広範囲にわたるこれらの専門的な技能を失いつつある。ランド・コーポレーションのオソンデ・オソバ氏はこれを技能喪失効果と呼ぶ。我々の集団としてのレジリエンスをむしばむ自動化への依存の傾向は加速され続けている。グーグルやアマゾンなどによる莫大な投資は、我々がとても把握できないまでのAI技術の飛躍的な前進をもたらした。オソバ氏によれば、21世紀の生活のあらゆる側面において自動化への傾倒は強まるばかりである。AIの社会経済的な衝撃のスピードと範囲を「重要で前例のない」ものであると言う。
現代のインフラは人間の渇望を驚くべき巧妙さで満足させてくれる。安楽、性急な欲求の充足、楽しい娯楽などである。そのようにして日を過ごすにつれて、我々はインフラの中断にますます脆くなる。同時にこれらのシステムも中断に弱くなる。最も影響があるのは、もちろんインターネットである。

(続く)

翻訳:杉野文俊
この連載について http://www.risktaisaku.com/articles/-/15300