2019/03/07
危機発生時における広報の鉄則
初動三原則は「SPP」と覚えましょう
では、具体的には何をすべきでしょうか? 私は、危機発生時から24時間以内の初動三原則をお勧めしています。当初は5つありましたが、私のクライシス対応経験から、3つなら思い出せるし、確実にできると実感したからです。
覚えやすいようにSPPと名付けています。S=Stakeholder(ステークホルダー)、P=Policy(ポリシー)、P=Position Paper(ポジションペーパー)。

初動1:ステークホルダーを把握する
対策本部を中心に、被害者、一般顧客、取引先、社員、マスコミ、関係省庁、警察を含めたすべての関係者(ステークホルダー)を洗い出し、図式化し、対応や連絡の優先順位を決めます。被害者が誰で、被害者を増やさないことを目的とした情報発信をするためです。
社員が人質やテロに巻き込まれた場合には、企業側は被害者になり、最大のステークホルダーは敵となります。情報発信においては敵に有利な情報を与えないことを目標とします。いずれにせよ、ステークホルダーの洗い出しによって被害者や自社のポジションを明確にでき、誰に意識をむけるべきか共通認識を形成することができます。
初動2:ポリシーを明確にする
何を守り、誰に何を伝えるべきかの方針を決めることです。具体的には、いつどのような形で公表するのか、記者会見を開くのか、開かないのか、個別対応とするのか。ウェブサイトでのコメントのみとするのか。記者会見を開く場合にはいつ開くのか、何回開くのか、誰が説明するのか、単独か、別組織と共同がいいか、どのような報道を成功イメージとして持つのか。
例えば、ネットでの炎上や噂の広がりに対しては、自社サイトで事実関係のコメントを発表することで収束します。しかし、今月、大手飲食チェーン店で従業員による不衛生な動画が続けて投稿されたことを受け、同社は記者会見を開催し、一斉休業すると発表。今後はネット炎上であっても記者会見する時代になってしまったかもしれません。
初動3:ポジションペーパーを作成する
起こった事実を客観的視点で説明し、どう取り組んでいるのか姿勢や見解を示す文書を「ポジションペーパー」といいます。「公式見解書」「統一見解」「プレスリリース」と表現する人もいますが、現状を説明する資料として「ポジションペーパー」という表現が私は気に入ってます。説明責任を明確にする最重要文書で、自社サイトへの掲載、報道関係者やその他の関係者に配布します。
内容は5つの項目でまとめると収束しやすいでしょう。(1)事実関係(2)経緯と現状説明(3)原因(4)再発防止策(5)見解。事実関係は5W1Hで簡潔にまとめる。経緯は組織として把握した時点から現在までどのような行動を起こしてきたのか。原因はわからない状況の場合には、どのように原因を調査しようとしているのか、経緯と共に記載し、原因を調査中であっても組織として反省すべき点を記載すると事態の収束はしやすいでしょう。昔と異なるのは「○○がミスをした」と個人の責任にすると印象が悪くなることは肝に銘じておきたいものです。再発防止策は、「再発防止に努めます」といったありきたりな表現ではなく、具体的な記載がある方が反省や意欲をより強く伝えることができます。見解は、関係者の処分や責任表明、反省の言葉や再発防止の決意を記載します。自分たちが被害者の場合には、断固とした憤りの姿勢にしてもいいのです。ここでは言葉の選択力が必要であり、記者会見ともなれば、どう伝えるかといった表現力も重要になってきます。
次回からは、具体的な失敗や成功事例を解説していきます。
(了)
- keyword
- 危機管理広報
危機発生時における広報の鉄則の他の記事
おすすめ記事
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2025/04/01
-
-
-
-
-
全社員が「リスクオーナー」リーダーに実践教育
エイブルホールディングス(東京都港区、平田竜史代表取締役社長)は、組織的なリスクマネジメント文化を育むために、土台となる組織風土の構築を進める。全役職員をリスクオーナーに位置づけてリスクマネジメントの自覚を高め、多彩な研修で役職に合致したレベルアップを目指す。
2025/03/18
-
ソリューションを提示しても経営には響かない
企業を取り巻くデジタルリスクはますます多様化。サイバー攻撃や内部からの情報漏えいのような従来型リスクが進展の様相を見せる一方で、生成 AI のような最新テクノロジーの登場や、国際政治の再編による世界的なパワーバランスの変動への対応が求められている。2025 年のデジタルリスク管理における重要ポイントはどこか。ガートナージャパンでセキュリティーとプライバシー領域の調査、分析を担当する礒田優一氏に聞いた。
2025/03/17
-
-
-
なぜ下請法の勧告が急増しているのか?公取委が注視する金型の無料保管と下請代金の減額
2024年度は下請法の勧告件数が17件と、直近10年で最多を昨年に続き更新している。急増しているのが金型の保管に関する勧告だ。大手ポンプメーカーの荏原製作所、自動車メーカーのトヨタや日産の子会社などへの勧告が相次いだ。また、家電量販店のビックカメラは支払代金の不当な減額で、出版ではKADOKAWAが買いたたきで勧告を受けた。なぜ、下請法による勧告が増えているのか。独占禁止法と下請法に詳しい日比谷総合法律事務所の多田敏明弁護士に聞いた。
2025/03/14
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方