第60回:10年間にわたって続けられているBCIのサプライチェーン・レジリエンス調査
BCI Supply Chain Resilience Report 2018
合同会社 Office SRC/
代表
田代 邦幸
田代 邦幸
自動車メーカー、半導体製造装置メーカー勤務を経て、2005年より複数のコンサルティングファームにて、事業継続マネジメント(BCM)や災害対策などに関するコンサルティングに従事した後、独立して2020年に合同会社Office SRCを設立。引き続き同分野のコンサルティングに従事する傍ら、The Business Continuity Institute(BCI)日本支部事務局としての活動などを通して、BCMの普及啓発にも積極的に取り組んでいる。一般社団法人レジリエンス協会 組織レジリエンス研究会座長。BCI Approved Instructor。JQA 認定 ISO/IEC27001 審査員。著書『困難な時代でも企業を存続させる!! 「事業継続マネジメント」実践ガイド』(セルバ出版)
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これまで本連載では、BCMの専門家や実務者による非営利団体であるBCI(注1)によるサプライチェーン・レジリエンス調査の報告書を度々紹介してきた(注2)。ここ数年はBCIが毎年11月上旬に開催している「BCI World Conference and Exhibition」(注3)で最新の調査結果が発表されるのが恒例になっており、2018年版も例年通りカンファレンスの場で11月6日に発表されたので、早速ここで紹介したいと思う。
まず本報告書において最も象徴的な設問のひとつである、直近の12カ月間にサプライチェーンに関連して経験したトラブルについては、今回も「計画外のITまたは通信の停止」が2012年以来不動のトップとなっている。2位には前回調査で6 位だった「異常気象」が続いているほか、3~5位までは順に「サイバー攻撃・情報漏えい」「能力・スキルの喪失」「輸送ネットワークの途絶」となっており、これらは毎回上位に登場する常連である。
また図1は、直近の12カ月間に経験したサプライチェーンに関するトラブルがどこで最も多く発生したを訪ねた結果である。ここで「TIER1」とは自社と直接取引のあるサプライヤー、「TIER2」は TIER1のサプライヤーを介して関わっているサプライヤーである。前回調査と比べると直接取り引きのあるサプライヤーにおけるトラブルが44%から52%へと若干増加している。なお、図1の一番下は「トラブルがどこで発生したか分析してない」という回答で、前回調査の22%から増加している。これは前々回の調査(2016年)で40%だったものが前回調査で22%まで大幅に減少したため、前回の報告書ではポジティブな評価をされていたが、再び望ましくない方向に動いてしまった。
図2は主要なサプライヤー(既存および新規の両方を含む)に対して、事業継続のための取り組みを行なっているかどうかを尋ねているかという設問に対する回答状況である。72%がYes(尋ねている)と回答しているが、これは2017年の前回調査とほぼ同じである(2016年の調査では63%であった)。
ちなみに(株)インターリスク総研が日本の上場企業を対象として2015年に実施したアンケート調査では、「取引先のBCPの有効性を確認していますか?」という問いに対して「はい」と回答した企業は19.2%にとどまっている(注4)。「BCP の有効性を確認していますか」と「事業継続のための取り組み(business continuity arrangements)を行なっているかどうかを尋ねて(ask)いるか」とではかなりニュアンスが異なるが、それを差し引いてもなお両者の間には大きな開きがあると考えられる。
今回の調査も従来同様にチューリッヒ保険グループと共同で実施されている。この協力関係が今後も続き、継続的に調査が行われることを期待したい。
■ 報告書本文の入手先(PDF33ページ/約3.5MB)
https://www.thebci.org/news/bci-supply-chain-resilience-report-2018.html
注1)BCIとは The Business Continuity Institute の略で、BCM の普及啓発を推進している国際的な非営利団体。1994年に設立され、イギリスを本拠地として、世界100カ国以上に8000名以上の会員を擁する。http://www.thebci.org/
注2) 本報告書の2013年版については、紙媒体の『リスク対策.com』vol.42(2014年3月発行)の連載記事「レジリエンスに関する世界の調査研究」第1回で紹介させていただいた。また2009~2015年までの7年間の調査結果を総括する記事を、同連載の第14回(vol.55/2016年5月発行)に掲載していただいた。さらに本報告書の2016年版、2017年版については、本連載で次のとおり紹介させていただいた。
2016年版:9月26日掲載分 http://www.risktaisaku.com/articles/-/3778
2017年版:11月15日掲載分 http://www.risktaisaku.com/articles/-/4141
注3)BCI がロンドンで毎年開催している年次大会で、2018年は11月6~7日の2日間にわたって開催された。 https://www.thebci.org/event-detail/event-calendar/bci-world-conference---exhibition-2018.html
注4) 株式会社インターリスク総研『第7回 事業継続マネジメント(BCM)に関する日本企業の実態調査報告書』2016年 https://www.irric.co.jp/reason/research/bcm/index.php
(了)
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