2018/11/22
AIブームとリスクのあれこれ
■政府による大規模な市民の監視
防犯カメラと言えば犯罪の抑止に役立つものと考えることが多く、私たちはあまりネガティブな印象は持つことはありません。しかし度を超すと、つまり個人を特定できるAIと連動した監視カメラが社会の隅々にまで行き渡ってしまうと、私たちにとって大きな脅威となってしまう可能性があります。
例えば中国当局は、犯罪を抑え込むために大規模なAIベースの顔認証技術による監視体制を敷いているというのです。CNBCはニューヨーク・タイムズの記事(下記参照)を引用し、現在中国には約2億台の監視カメラが設置されていると述べています。しかも世界で初めて「社会信用システム」という仕組みを考案し、市民の言動を追跡して格付けし、飛行機の搭乗その他のサービスへのアクセスを許可したり禁止したりしようとしている。中国という国はすでにディストピア社会に移行しつつあるのでしょうか。
■ニューヨーク・タイムズの記事
https://www.nytimes.com/2018/07/08/business/china-surveillance-technology.html
中国は経済における世界のリーダーを目指していますが、それはAI部門についても言えることです。AIと顔認証技術を使ったテクノロジーを開発したのはアリババが出資するベンチャー企業のSenseTimeで、広州市と雲南省の自治体にAIベースの顔認証システムを提供しています。同社のウェブサイトによると、2017年以降、広州市の公安当局では2000人以上の犯罪者を特定するのにこのシステムが役立ったと伝えています。
こうした状況を懸念する声があることは言うまでもありません。ニューサウスウェールズ大学のAI学部教授トビー・ウォルシ氏は「監視は、AIが予期しない恐るべき結果をもたらす対象として最も上位にランク付けされていたものだ」と述べた。CNBCはこう結んでいます。
(了)
AIブームとリスクのあれこれの他の記事
おすすめ記事
-
なぜ製品・サービスの根幹に関わる不正が相次ぐのか?
企業不正が後を絶たない。特に自動車業界が目立つ。燃費や排ガス検査に関連する不正は、2016年以降だけでも三菱自動車とスズキ、SUBARU、日産、マツダで発覚。2023年のダイハツに続き、今年の6月からのトヨタ、マツダ、ホンダ、スズキの認証不正が明らかになった。なぜ、企業は不正を犯すのか。経営学が専門の立命館大学准教授の中原翔氏に聞いた。
2024/11/20
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!今週のニュース解説
毎週火曜日(平日のみ)朝9時~、リスク対策.com編集長 中澤幸介と兵庫県立大学教授 木村玲欧氏(心理学・危機管理学)が今週注目のニュースを短く、わかりやすく解説します。
2024/11/19
-
ランサム攻撃訓練の高度化でBCPを磨き上げる
大手生命保険会社の明治安田生命保険は、全社的サイバー訓練を強化・定期実施しています。ランサムウェア攻撃で引き起こされるシチュエーションを想定して課題を洗い出し、継続的な改善を行ってセキュリティー対策とBCPをブラッシュアップ。システムとネットワークが止まっても重要業務を継続できる態勢と仕組みの構築を目指します。
2024/11/17
-
-
セキュリティーを労働安全のごとく組織に根付かせる
エネルギープラント建設の日揮グループは、サイバーセキュリティーを組織文化に根付かせようと取り組んでいます。持ち株会社の日揮ホールディングスがITの運用ルールやセキュリティー活動を統括し、グループ全体にガバナンスを効かせる体制。守るべき情報と共有すべき情報が重なる建設業の特性を念頭に置き、人の意識に焦点をあてた対策を推し進めます。
2024/11/08
-
-
-
リスク対策.PROライト会員用ダウンロードページ
リスク対策.PROライト会員はこちらのページから最新号をダウンロードできます。
2024/11/05
-
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方